第6章 熱砂の国
部屋に荷物を運び入れ、茶を淹れて一息ついたところで、○○は待ってましたとばかりにシルビアに向きなおった。
「ねえ!シルビア」
「ど、どうしたの?」
「私、シルビアのこと信じてるんだけど」
「何よ突然…」
「シルビアも、私のことをそろそろ信用してくれてもいいと思うの」
「…どういうこと?」
怪訝な顔をするシルビアに、○○は自分の鞄を突き付けた。
「そろそろ私も、一人で外に出たいの」
「何ですって?」
○○は鞄を開けると、シルビアに中身を取り出して見せた。
艶やかに水気を帯びた美しい糸と、虹色の光沢をもつ綿の蕾が幾つか、丁寧にハンカチにくるまれている。
「あら、あまつゆの糸に、ようせいの綿花じゃない?アナタこれ、どこで…」
○○は小さく頷き、
「ダーハラ湿原で見つけたの。きれいでしょ?売れば多分お金になるよね?」
――道理で。
ここに来るまでの道すがら、なにやらコソコソしているのはそれだったか。
シルビアは頭に手を当てて目を閉じた。
「…自分で見つけてきたのね」
「うん。」
「で、自分でお金にしたいと。」
「そう。」
子供の様に何度も頷く○○を前に、シルビアは考え込んだ。
「まあ、確かに、お店でのやり取りも分かってきているみたいだけど…」
「大丈夫だよ。信じてよ」