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【DQ11】星屑の旅人

第6章 熱砂の国


真横に構えた鞘から刀身を引き抜くと、澄んだ音が奔る。
刃はすらりと細く、だがよく鍛えられて硬く締まり、シルビアの手の中でまるで生き物のように滑らかに空を切った。
「いい剣ね。軽いし、しっかりしてる。素直だわ」
短く感想を述べるシルビアに、武器屋の主は目を細め何度も頷いた。
シルビアはひと通りの型を試してから軽やかに納刀すると
「ウン。頂くわ」
「ありがとうございます」
ゴールドの入った袋をカウンターに置く。
主人は一度○○を見て、
「お連れ様の分は、よろしいので?」
護身用の短剣等もご用意ありますが、と尋ねた。
が、シルビアは頭を左右に振って、
「ああ、この子は大丈夫よ」
○○に、笑みを向けた。
「――アタシが守るもの」
「えっ」
○○の頬に朱が奔る。
主人はいかにもほほえまし気に、
「然様でございますか。失礼いたしました」
いそいそとレイピアを包んでシルビアに手渡した。
○○は頬を抑えたまま、シルビアは素知らぬ顔で悠々と店を後にする。

屋外に出た途端再び灼熱の陽光が二人の肌を焼いた。
「やあね。サマディーの日差しって明るいのはいいんだけど、ちょっと強すぎるわ」
慌てて、日陰に避難するシルビア。○○はふと、
「ねえ、シルビア」
「んん?」
「…さっき、私のこと、守ってくれるって言ったけど」
「ええ。言ったわね?」
思い切って、切り出してみた。
「…私も、自分の力で戦えるようになりたい」
「…どういうこと?」

――ここまでの道は比較的平穏だったとはいえ、避けきれず魔物に出くわすことはやはり何度かあった。

○○は戦闘技術をもたないので、そうした場面では常にシルビアの背にかばわれることになる。
彼の剣技は相当に熟達していたが、やはり背に人一人を守って戦うのは至難の業だ。
はっと目を覆いたくなるほど危うい場面も、なかった訳ではない。
今回レイピアを新調するに至ったのも、そうした酷使がたたったことが要因の一つだった。
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