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【DQ11】星屑の旅人

第6章 熱砂の国


――暑い。

黙っていると滴ってくる汗をぬぐいながら、○○はずり落ちかけた荷物を背負いなおした。
夜明けからまだ一時間と経たない早朝であるにも関わらず、サマディー王国首都正門前の市場は賑わい、気温は上昇を続けている。

ダーハルーネの港町から、ダーハラ湿原を経由して三日。
ようやくたどり着いたサマディー王国は、岩と砂に覆われた砂漠の只中にあった。
焼けつくような荒野からは絶えず強烈な熱波が吹き込んでくる。それを防ぐために建立された城壁の向こうには、広大な砂漠地方で唯一最大のオアシス都市が広がっていた。

サマディーの王都は、先ごろまで滞在していたデルカダールの城下町とは、また違った趣の熱気にあふれた都である。
乾ききった砂まみれの風に乗って、どこからともなく漂ってくる香辛料の香り。
街角には色とりどりに染め上げられた見事な南方織りの布地がはためき、その合間にきらめくのは複雑な細工が施された装飾品、艶やかな脂の浮いた、瑞々しい南国の果実たち――

思い思いの品を扱う店が賑やかに商いの声を上げ、加えて珍品を求め熱砂を越えてきた各国の隊商が、町の各所で荷を広げてはそちらでも盛んなやり取りを行っていた。

相変わらず、ありとあらゆる光景が怒涛のように押し寄せてくる。
が、当初のような人酔い、情報酔いは鳴りを潜めていた。
シルビアが地図を片手に、色々と解説してくれるのも助けになっている。
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