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【DQ11】星屑の旅人

第5章 次なる旅立ち


――デルカダールから再度南下し、ソルティアナ地方沿岸から、ダーハルーネへ向かっての船旅は、南大陸に向かう人々にとっては一般的な道程である。

しかし記憶のほとんどを失っている○○には、当然ながら人生最大の衝撃だった。
初めて、ソルティアナ海岸でシルビア所有の帆船『シルビア号』を見た○○は、
『お城が水たまりに浮いてる…』
と言葉を失ってしまった。
現在の彼女には、船はもとよりそもそも海についての知識もない。
これからは、その浮かぶ城に乗ってこの巨大な水たまりを何日も進んでいくのだと説明すると、○○は完全に顔色をなくした。危険はないと安心させるにはかなりの労力を要した。
しかし一度乗船させてさえしまえば、○○は海もシルビア号も、すっかり気に入ったようだった。
季節もよかった。初夏の内海は、まだ風も弱く波も穏やかである。本格的な嵐と魔物の季節にはまだ、幾ばくかの猶予があった。

○○は、折に触れシルビアを捕まえては波濤をかすめる様々な生き物について訊ねた。
日光浴に浮き上がったしびれくらげ、遥か海底を泳ぎ回るマーマンの群れ、甲板に迷い込んだだいおうキッズを見つけた時は、魔物と気づかず部屋に連れて帰ろうとしてシルビアに慌てて止められたことさえある。
今度の心配は、あまりのはしゃぎ様に、海に落ちないかどうか、になった。
ピンクマスクの荒くれ航海士アリスとも早々に打ち解け、暇さえあれば海や船、航海術についてあれこれと教わる姿も随所で見られる。
アリスも、彼女の無邪気さや好奇心旺盛な気質を好もしく感じているらしく、

『シルビアさんがお連れするのも分かりますなあ』

と、その視線はまるで実の娘を見るかのようでもある。

――子供がいるって、こんな感じなのかしら。

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