第1章 星降る夜
思わずカップを落としそうになって慌てて支える。
「アタシはそこに偶然通りがかって…あなたに寄ってきた魔物を追っ払って、何とかここに連れて来たってわけ」
「ご、ごめんなさい。あの、話がよく分からない…んですが」
「分かんないのは、こっちもよ。」
男は、どっかりと対面のベッドに腰掛けた。
「あなた一体、何者?なんであんな所にいたわけ?」
宿屋のおばちゃんに聞いても街のモンじゃないっていうし、あなたはあなたで目を覚まさないし、と言った後で、
「ああ、そうだ。名乗るのが遅れたわね。アタシはシルビア。流しの芸人をしてるの」
「え、あ、あの…助けてくれて、ありがとうござい…ます…」
「いいわよ別に。それよりあなた、名前は?」
名前、そうだ。名前。○○は少し考えこむと、
「えっと、○○、といいます」
「変わった名前ね、聞かない響きだわ。で、どっから来たの」
「そ、それが…」
○○は、正直に事情を打ち明けた。
「覚えてないぃ!?」