第5章 次なる旅立ち
「ところであなた、次のアテは…たぶんないのよね?」
「うん…ごめんなさい」
謝ることないわよ、とシルビアはカラカラ笑い、
「だったら、ちょうどいいかも。次は私に付き合ってもらうわ。少し遠いけど、南大陸のサマディーって国に呼ばれてるの。」
サマディーの名に、○○はわずかに顔をしかめた。
確か、だまされて向かうはずだった国の名だ。
「サマディー…ってどんな国なの?」
シルビアは、そうねえ、と頬に指を当てて考え込む。
「砂漠の真ん中にある、オアシスの国よ。デルカダールほどではないけど、南じゃ一番の大国だわ。交易と騎馬が盛んね。あとはそうそう。国営サーカスがあるのよ」
「国営サーカス?」
「すごいでしょ!今回アタシはそこに呼ばれてるってわけ。とまあ、とにかくデルカダールとはまた違った賑わいがある国よ。○○もきっと気に入るわ」
「うーん…」
騙された記憶が余程尾を引いているのか、珍しく渋る○○の頭を軽く撫でると、
「大丈夫。アタシが一緒だもの」
シルビアは穏やかに微笑んだ。○○はいかにもくすぐったげに目を細める。
――まるで子犬ちゃんね
さて、とシルビアは仕切り直すように両手を叩くと、
「今回はちょっとばかり、これまでと違った旅になるわよ。」
○○に向かって片目をつぶってみせる。
――何と言っても、サマディーのある南の大陸には、内海を越えなければならない。
「――船の旅だからねん」
すごい、と○○は丸い瞳を輝かせた。そして、
「ところで、フネって、何なの?」
と至極無邪気に尋ねた。