第5章 次なる旅立ち
――そうだ。
改めて気付いた。
シルビアは旅の芸人である。いつまでもこの街に、腰を落ち着け続けるわけではない。
「そっか…」
○○は俯いた。しかしシルビアは、
「ちょっと。何他人事みたいな顔してるのよ。アナタも手伝うのよ」
「えっ…?」
両腕を組んで、わずかに顎をそらす。
「何よ。アタシたちの旅はこれからでしょ?」
呆然とする○○を見て笑うと、
「――この前言ったばかりじゃない」
○○の鎖骨のあたりを指でつつく。
「○○。アタシはあなたの旅が『本当に』終わる時まで、一緒にいるつもりよ。」
まだ始まったばかりじゃない、と笑うシルビア。
「これから当分、アナタがアタシの旅の相方よ。――覚悟しろっていわなかったかしら?」
「は、はい…」
――またも涼やかな風が吹き抜けていく。
初夏の王都は、花の香りがした。