• テキストサイズ

【DQ11】星屑の旅人

第5章 次なる旅立ち


「――シルビアが人気者なのは知ってるけど」
「まあ、ありがとう。ちゃんと分かっててくれて嬉しいわ」
そうしていたずらっぽく笑うシルビアの前にまたしても突然、頼んでいないフルーツの盛り合わせが届けられた。
「どうぞ、シルビア様――オーナーからのサービスです」
ウェイターはそういうと、シルビアと○○にそれぞれ微笑んで去っていった。
盛り合わせというが実際はほとんど小山のように盛られたケーキとフルーツの美々しい塊だ。改めて、感心する○○。
「すごーい…」
「ね。だから、あんまり気を使わないでちょうだい」
シルビアは、豪勢なクリームとケーキでできた塔から、イチゴをつまんでかじる。
「そうね、どうしても他に何かしたいって言うなら…」

――笑いながら、もう一つとったイチゴを○○の口に押し込んだ。

「アタシの前では笑っててほしいわ。折角誓いも立てたことだしね。」
○○の笑ってる顔、もっと見たいのよ、
シルビアの言葉か、表情か、はたまたイチゴを覆ったブランデークリームのせいか。
○○の頬は瞬時に熱くなった。耐えきれず視線を外し、放り込まれたイチゴを飲みこむ。

――抜けるような青空に、放たれた白鳩が幾羽も舞った。

風には花の香り、何処からか吟遊詩人の歌声が聞こえる。嘘のように平和な昼下がりだ。
○○はぼうっとその光景に見入った。

――不思議だ

こうしていると心が凪いで行くのを感じる。記憶をなくしたことも、人の強烈な悪意に出会ったことも、何もかも別世界の出来事のようでさえある。
実際は全て、半月と経たない間の話だったにもかかわらず、だ。
「さてと。」
シルビアは、最後の茶を飲み干すと、
「それじゃあ名残惜しいけれど。そろそろ出発しようかしらね」
立ち上がる。○○はそこで我に返った。
「あ、うん。分かった」
自分もあわてて椅子を引くと、
「次は…どうするの?」
「ちょっと早いけど、一端宿に戻るわ。…そろそろ荷づくりもしたいし」

/ 122ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp