第4章 更夜の誓い
○○の視線に気づいたシルビアは、おどけたように片目をつぶると、
「…アタシね。色々あって、昔誓いを立てたのよ。」
――大切な誓いよ
歌うように彼は言う。
「誰もが笑って暮らせる世界を作りたい。そう願って故郷を出たわ。」
――深く息を吸い、シルビアは○○を見た。
「皆って、○○、もちろんあなたもその一人なのよ。」
とシルビアはひどく真面目な表情をつくると
「――だからアタシは、アナタを助けるの。」
――我シルビアは、これなる○○をその長き旅路の終わりまで、剣と命にかけて守り通すことをここに誓う――
鋼の声音。それでいて、どこまでも透徹した強い、意思。
そして、
「これで、もう安心ね?」
シルビアはニッと満面の笑顔を浮かべた。
呆然とする○○の前で、再び納刀すると、まるで魔法が解けたようにそこにはいつものシルビアが立っていた。
「…さぁさ。いつまでもこんなとこに居たら冷えちゃうわ。宿に戻ってあっついシャワーでも浴びましょ」
○○をまたも軽々と抱きかかえた。
「ちょ、ちょっとシルビアさ…」
思わず暴れる○○の鼻先を指ではじくと、
「だから。シルビア、でいいわよ。それより○○」
「は、はい…」
「アナタ、アタシにここまで誓わせたのよ。最後まできっちり付き合ってもらうから、覚悟しといてねん?」
――夜空に今一度、星が流れた。
○○も、シルビアも、いや恐らくこの街の誰も気付かぬほどささやかに、夜空の一番高い場所で輝く青い星が、夜の帳をなぞるように流れて消えた。
――まるで運命の誓いを受け取り満足したかのように。