第4章 更夜の誓い
――見えているのだろうか。シルビアには。
きっとどうしようもなく汚れたこの顔が。○○は鼻をすすり、涙をこぼし続ける。
――もうどうにでもなれ、という心地だった。
シルビアは、苦笑しながら、
「怖かったのね」
「…うん」
○○の頭を撫でる。
「もう大丈夫だから」
「…うん」
「心配しなくていいから」
「…うん」
そして、不意に体を離すと、深々とため息を付いた。
「でも、ある意味、あのボウヤの言うことも、もっともなのよねえ…」
――出会ったばかりの他人の善意を、無根拠に信じろというのも、考えてみれば無茶な話ではある。
とシルビアは口元に指を当てて考え込んだ。
「アタシがアナタを助けたい理由、そういえばちゃんと言ってなかったし。うーん。」
と、いきなり
「そうだっ」
シルビアは手を叩くや否や立ち上がって、腰のレイピアを鞘から抜いた。
――直立し、抜き身を自身の眼前に立てるように構える。
「…し、シルビア?」
思わず、○○は息を飲んだ。
剣を捧げたシルビアの姿は、銀色の月光に縁取られ、まるで神話から抜け出した騎士のようにも見えた。
――この人、本当に一体――