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【DQ11】星屑の旅人

第4章 更夜の誓い


「おバカちゃん」
「はい…」
返す言葉もない。○○はただ俯くだけである。
「これがあなたが出て行った理由なのかしら?」
あきれ果てた、というようにシルビアは首を振った。
「あーんなつまんないボウヤちゃんにひっかかって、悪いお酒をしこたま飲まされて」
自分で何とかするっていうのはそういうことなのかしら、と口調こそ穏やかだが、一言一言が痛いほどの棘で覆われている。
「違います…」
反駁しようと顔を上げた瞬間、思いもしないものが○○の目に飛び込んできた。

――とても寂しい、どこか痛々しささえ滲んだシルビアの面差しだった。

「シルビア…さん」
「…分かってるわ。アタシのことが、やっぱり信用できなかったのよね。」

――仕方ないわよね、と俯くシルビアに、○○はほとんど反射的に、
「それは違います!」
かすれた声で叫んだ。
静寂が敗れ、どこかの木陰に眠っていた鳥が驚いて飛び去る。○○は慌てて口元を抑えると、
「違う、んです…」
「じゃあ、どういうことなのかしら」
辺りを見回してから、シルビアの言葉にもう一度俯き、膝の上で握りしめた手を見つめた。

思考回路は依然として深い靄の中だが、○○は必死に正確な言葉を探し回る。

――間違えたくない。

○○は両手を何度も組み合わせる。

――そうだ。間違えたくない。

それは自分でも驚くほど強い感情だった。

――私は、常に注がれ続けるこの人の誠実さに、偽りなく答えなければならない。

そうだ。シルビア、彼はとても誠実な人だ。いっそ高潔と言ってもいい程だろう。理屈ではなく感覚で、○○の肌身に沁みて感じられる。
こうしている間も、シルビアは黙って○○の言葉を待っている。
急かしもしなければ、無理に促しもしない。
沈黙さえまっすぐ優しい。
寄り添うように温かい。

背を押されるように、○○は訥々と言葉を紡いだ。
「――怖かったん、です」
シルビアは軽く腰をかがめて○○を見、そしてひどく穏やかに尋ねた。
「…いつか、何かされるんじゃないかって?」
「いえ、そういう意味ではなく」

――両手を振って否定する。

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