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【DQ11】星屑の旅人

第4章 更夜の誓い


「おい…いきなり、どうしたんだ」
赤毛は怪訝な目つきで○○を見る。
「えっ…あ、あの、私…」

――自分でも、何が起こったかよくわからない。

心臓が狂ったように跳ね回った。呼吸を何度繰り返しても、酸素が肺に入っていかない。苦しい。

今私は何を見た――?

呆然と胸元を抑えて○○は赤毛に向き直る。
すると赤毛は何を誤解したのか、
「おい、まさかここまで来て『やめる』は無しだぜ」
スラムの突き当りを背に、腰に手を当てた。
そういうことではない、ただ、今自分の頭によみがえったのは――
まともな言葉を探しているうちに、赤毛は苛立ち始めたようだ。
「…何のためにここまで来たと思ってるんだよ」

――突然、○○の襟首をつかんで引き寄せた。

「!?」
唐突に態度を豹変させ、赤毛は○○の腰を乱暴に抱くと
「ボス!俺だよ!連れてきたぜ!」
暗がりに沈んだ廃墟に向かって大声で呼びかけた。
廃墟の――半分以上崩れてはいるものの、ギリギリ建物の形状を留めている――外壁の隙間から、
「うるせえなあ、何だ一体」
恐ろしく野太い声と同時に、極度に人相の悪い男が姿を表した。
――かなりの巨漢である。
裸の上半身はおびただしい傷跡と節操なくかき集められた金銀の装飾品に覆われている。
出てきた男は、一人ではなかった。
似たような風体の、いかにもごろつき然と言った男たちが、巨漢に続いて我も我もと姿を表す。
男たちの身体に浮いた脂が、それぞれ手に持った松明の明りを反射して、てらてらと輝いていた。

――地獄の底のような光景だ。

思わず声を失った○○の横で、赤毛はあっけらかんと、
「今月の獲物だ」
いうが早いか、○○の身体を男たちの方に突き飛ばした。
「なっ…!」
思わずつんのめり、地面に膝をついた○○の頭上に、
「へええ」
と下卑た声が降ってくる。
見上げれば、おぞましい笑みを浮かべた男たちが、一斉に値踏みするがごとく、○○の身体をじっとり眺めまわしていた。
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