第3章 見知らぬ街
「早速今晩、頭領に話を付けに行こう。こういうことは、早い方がいい」
「えっ…」
「ちょうど、明日出ていく便があるんだよ。」
――脳裏に再び、シルビアの影がよぎった。
それでいいのか、と心の中の誰かが声を上げる。
「わ、私は」
思わず言葉を詰まらせた○○に、赤毛は首を振った。
「分かるよ」
――その眼差しには、深い憐れみのようなものが混じっている。
「俺も孤児だったんだ。親に捨てられてから今まで、ずっと下層民として生きてきた。」
辛かったよな、と赤毛の手が○○の頭に伸びた。
「頼る相手も、信じる相手もまるでいないってのは」
とても優しい手つきで、赤毛は○○の髪をなでた。
――○○は、俯いて、手元を見つめる。
目覚めてから今までの記憶を思い返してみる。
確かにそうだ。彼の言う通り、自分はずっと、
――不安だった。
――怖かった。
だが果たして、『辛かった』だろうか?
――深くしみ込んだ酒が、○○の思考に靄をかけていく。
「いつかは、一人で生きていかなきゃならねえ時が来るんだ。」
赤毛は妙にきっぱりと断言した。
「それが、今なんだと思うぜ」
――○○の目を、真正面から見据えて言った。