第3章 見知らぬ街
確かに今後どうするか、正直なところ全く何も考えていなかった。
自分で望んだとはいえ、飛び出したことはほとんど衝動でしかなく、特にこれからの目算があったわけでもない。
すると赤毛は暫く考え込み、
「あのさ、○○。『隊商』って知ってるか?」
国と国の間でやり取りを行う、旅商人の一行なんだが、と簡単に説明すると、
「…手伝ってみないか?」
と切り出した。○○は目を二三度瞬き、
「手伝う?手伝うってその隊商…の仕事をですか?」
「そう。悪い話じゃねえと思うぜ」
――何せ、隊商は多くの土地や国を回る。
「親兄弟探して世界中旅するなら、何もかも一人で――ってわけにもいかねえだろ?」
隊商で働きながら各地を歩けば、失われた記憶や家族の手がかりも、見つかるかもしれない。
「俺、サマディー王国への定期隊に伝手があるんだ。お前さえよかったら、紹介してやるよ」
「本当ですか!」
思わず身を乗り出したが、○○はすぐにうつむいた。
「でも、私、お役に立てるかどうか…」
「何言ってんだ」
赤毛はニッと白い歯を見せて笑った。
「男所帯だからな。奴ら女手ならいつでも大歓迎さ。男なら力があるか、読み書き計算できるかって話だけどよ。」
女なら誰でもできる仕事があるし、と○○の肩を叩く。
――炊事や洗濯のことだろう。正直なところ、ほとんどまともな記憶が残っておらず自信がない、とは言いづらかった。が、赤毛は見透かしたように、
「まっ、おいおい覚えていけばいいさ。」
○○の肩を気さくに叩いた。