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【DQ11】星屑の旅人

第3章 見知らぬ街


確かに、赤毛の言う通りだ。自分は逃げた。
シルビアと一緒にいることが、彼の善意を無償で受け取ることが、たまらなく不安に感じられたからだ。

でもそれは、赤毛の言うような意味での『不安』だったのだろうか?
いつか途方もない、あるいは生臭い『見返り』を要求されることが怖かったからか?

――分からない。

過ぎた酒のせいか、ただ頭がひどく痛んだ。
沈黙した○○を横目に見ながら、赤毛は言った。
「悪い。ちょっと言いすぎたな」
「いえ…」
赤毛の言うことは、確かに客観的にはもっともな事実だろう。
ただ、改めて突きつけられても、○○の心には収まってゆかない。むしろ、決めつけられることにわずかばかり不快すら覚えた。

――○○はふと、
「…じゃあ、赤毛さんは、なんで私を助けてくれたんですか」
「ん?」
すると彼は、鼻の先を赤くして、
「まあその…お前がいいとこのお嬢だと思ったから。助ければ、さぞ『手厚い』お礼があるかと思ってよ。」

――なる程。
素直な答えに、○○は思わず苦笑する。
「残念でしたね。結局私、お返しできるようなもの、何も持ってませんし。」
「そりゃ想定外だった」
赤毛は、おどけたようにがっくりと肩を落としながらも、○○に頬を寄せた。
「――まっ、久々にいい女と酒が飲めたから、それでいいってことにするさ」
「なんですか、それ」
笑うと、赤毛の頬には深いえくぼができる。確かに、環境によるものか多少すれた振るまいはあるものの、優しく整った笑顔と口調には、シルビアとはまた別種の、荒っぽいが率直な親しみやすさを感じる。
「しかし、そうなるとお前も先行き不安だな」
会話が途切れたところで、つまみの干し肉をかじりながら、赤毛は言う。
「そう、ですね…」
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