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【DQ11】星屑の旅人

第3章 見知らぬ街


「…ふうん。つまり○○、お前は今までの記憶がねえってことか。」
「…はい。」
赤毛は卓に両肘をつくと、深いため息を付く。
「で、ここまでその旅芸人に連れられて旅してきたと…」
「そう、なんです」
空になった○○のジョッキに、赤毛が再び酒を注いだ。
「あのさあ。見ず知らずの俺がいうことじゃねえけど、よくそんな簡単にそいつのこと信用したな。お前」
「えっ?」
○○を指さすと、
「○○、そいつといて、なんかしたか?」
「何かって?」
「金…はもってねえか。だったら、身体で払ったとか、そういうことは?」
「なっ…!」
○○は一気に赤面する。
「あるわけないじゃないですか!」
「ばっ!声がでけえって!」
慌てて押しとどめる赤毛。
○○は赤くなった頬を抑えて、
「そんな事絶対にないです。ありえませんよ」
「○○があり得るかあり得ないかの話じゃねえ。相手はどうなんだよ。迫られたこともなかったのか?」
「…ありません」
一度も、と強く念を押すと、どういうわけか赤毛はひどく真面目な顔つきになった。
「…もしかしたら、逃げてきて正解だったかもな」
「え…」
赤毛は、もう一口酒を煽る。
「何の見返りもなしに、普通そこまでしねえよ。自分でモノにしねえとなると、そいつ、お前をどっかの金持ちにでも売り飛ばすつもりだったんじゃねえか?」
そんな、と○○は絶句した。
「お前の器量なら、充分いい値が付く。生娘ならなおさらだ。」
「シルビアさんはそんなこと…」
「分かんねえさ」
卓に肘をつき、赤毛は店内を見渡す。
「なあ○○。見てみろよ。」
店は、雑多な種類の人々でにぎわっている。赤毛は、○○の頭を引き寄せ、
「お前、この中の誰が善人で、誰が悪党なのか見ただけで分かると思うか?」
耳元に囁いた。それは、と言い淀む○○に、
「上手い話にはな、絶対に裏がある。『純粋な』善意なんてこの世に存在しねえ。」
妙にきっぱりと言い捨てた。
「お前も、それが『怪しい』と思って逃げ出したんだろ」

――○○は、返す言葉を失った。
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