第3章 見知らぬ街
「兵士の奴ら、悪魔の子には協力者がいたんだろうって、今殺気立ってやがるんだ。少しでも怪しいと思ったらすぐに捕まえて牢に入れちまう」
そんな、と○○が口元を抑えると、赤毛は首を振った。
「俺の仲間だって、もう何人連れていかれたか分からねえ。あいつら、俺たちが下層民だからってろくに話も聞かねえんだよ」
赤毛は、○○にをちらりと見ると、
「アンタ、どこの箱入りか知らねえけど、早くから目えつけられてたぜ。兵士ったって、まともな奴ばかりじゃねえ。この騒ぎに乗っかって、女に悪さする奴もいる」
――まさか。
○○は絶句した。
「似たようなこと、前も何回かあったんだ。ちょっと器量がいいと、いちゃもん付けて、引っ張りこんで…まあ、この辺りは特に危険だからな」
――つまり、赤毛は不良兵士に狙われた○○を見かね、機転を利かせて助け出してくれたということらしい。
「ありがとうございます、あの…何とお礼したらいいか」
いいって、と赤毛は手を振ると、
「あいつらには、俺のダチもだいぶ泣かされたからさ。…それより、家どこだ?送ってってやるよ。」
「家、ですか…」
――一瞬、シルビアの横顔がよぎった。
再び黙り込む○○。俯いたその顔を、赤毛はやや心配そうに覗き込んだ。
「…なんだ。訳アリか?」
○○は答えない。答えられない。すると赤毛は
「ま、どっちにせよこんなところでいつまでも立ち話ってのもよくねえな」
○○の手を取ると、
「ついてきてくれ、腹ごしらえでもしようぜ」
迷いのない足取りで、入り組んだ路地の一つへと歩を進めた。