第3章 見知らぬ街
思わず身を引く○○だったが、兵士はその肩を掴むと、
「どこから来たのだ。名前は」
勢いに押されて言い淀む○○。
「…デルカダールの民ではないな」
ともう片割れの兵士が○○の手首をつかんだ。
「痛っ!」
――乱暴に袖をまくられる。
兵士は○○の腕を丹念に改めると、
「印、ありません」
不満げに鼻を鳴らした。
「ふん、では小遣い稼ぎの私娼というところか」
「えっ…?」
戸惑う○○に、兵士は顔を近づけると、
「分かっているな。王都ではどこであれ、無届の街娼行為は禁じられている。来い」
――○○は青ざめた。
「違います、あの、私はそんな」
「言い訳なら詰所で聞こうじゃないか」
強く腕を取られる。
振り解こうとしたが、兵士の力は強かった。
決してやましいことがあったわけではない。しかしこの剣幕では、どこへ向かったところでとてもまともに話を聞いてもらえるとは思えない。
――どうしよう
混乱で頭が真っ白になった。
――怖い
その瞬間だった。
「おおい!ここに居たのか!探したぞ」
路地の奥から、大声が上がった。と、同時にこちらに駆け寄ってくる若い男。
赤髪に、そばかすの浮いた素朴で優しい顔立ちだが、見覚えはまるでない。
――誰?
青年は、息せききって○○の傍まで走りよると、兵士たちに向かって深く頭を下げた。
「ありがとうございます!兵隊さん、『妹』を見つけてくださったんですね!」
「…はあ?」
顔を見合わせる二人の兵士。
と、そこで青年は○○に向き直り、
「ダメだろ、都会が珍しいからってふらふらしたら!」
全くお前はいつもそうやって周りを見ずに、と肩を掴んで揺さぶる。
――何なの