第3章 見知らぬ街
息が切れ、足がもつれるまでかけ続け、○○は中心街からかなり離れた一角にたどり着いた。
いかにも、物寂しくうらぶれた街区である。
むしろそうした風情すら通り越し、すでに廃墟と言っても過言ではない。
崩れかけた家々はお互いを押しのけあうように歪に傾き、舗装もはがれた街路はたまり水で泥のようにぬかるんでいる。さらには薄暗く、日の光もまともに届かないありさまだった。
それでいて、ここまで荒んでいてもなお、それなりに人の暮らしがあるのだろうということは、頭上にはためく洗濯物から察することができた。
ただ一度でも王都の王都たる賑わいを見ただけに、○○の目にはこの空間が、まるで置き去りにされたように、あるいは厭われ打ち捨てられた場所のように映った。
――まるで地の果て
事実、そうなのかもしれない。
○○は、片腕で自分の体をそっとさすった。
理屈でなく、何とはなしに漂う不快な気配を、○○は肌で感じていた。
人の姿はどこにも見えないにも関わらず、先ほどからこちらに注がれる気配らしきもの。
――刺さるような、あるいは舐めまわすような、強烈に不愉快な感覚。
『戻ろう』
足を元来た道の方へと向けると、そこへ
「おい、娘」
野太く、こもった男の声が掛かった。
振り向くと、デルカダール正規軍装の兵が二人、狭い路地から大股にこちらに近づいてきた。
「…こんな場所で何をしている?」
頭部を完全に覆った兜から、強い言葉が降って来る。