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【DQ11】星屑の旅人

第2章 デルカダールへ


階段を降りると、運よく一階は完全に無人だった。
悪事を働いているわけでもないのに、誰にも見咎められず宿の外に出た瞬間、○○はほっと安堵のため息を付いた。

王都の空は、抜けるような快晴である。正午を過ぎたばかりの日差しは、無防備に立ち尽くした○○の目に刺さった。
――眩しい。

○○は目を細め、改めて眼前の通りを眺めた。
宿の中、あるいはシルビアの傍から離れて見る景色は、まるで別世界の様に目まぐるしい。目から入ってくる情報だけでも相当なものだ。強いめまいに体がふらつきそうになる。

年齢、人種、性別、何もかも様々な人々は、それぞれに忙しなく行き交いながらも、皆はっきりとした目的地を持っているようにも見えた。
○○は通りの真ん中に立ち尽くしながら、

――ああ、私、一人なんだ。

置かれた現実に、初めての心細さを覚えた。
何もない。
私には本当に何もない。

この足を進めるべき場所さえ分からない。

ただ、分かるのだ。
失くした記憶の奥底で割れんばかりにこだまする誰かの声。

『お前はここに居てはいけない』

――逃げるんだ、○○

それは理由のない衝動だった。
○○はほとんど背中を押されたように駆けだした。
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