第2章 デルカダールへ
――アタシは興行主ちゃんと打ち合わせがあるから、ここで待ってて頂戴。
夜には戻るわ、と言いのこしてシルビアが出ていくと、○○は部屋に一人取り残されることになった。
宿のサービスは好きに使っていいとのことだったが、小腹満たしにテーブルの上の果物を二、三つまんだ後は何も思い浮かばない。
――私はこれからどうすればいいんだろうか。
宿の主人がシルビアのためにと用意してくれた部屋は、驚くほど立派だった。
無理やり運び込まれたらしきベッドが二台並んでいるが、それでもまだ広さには余裕がある。上品かつ上質な調度類に、清潔なバスルーム、真新しいリネン類、見事な窓からは、王都の街並みが一望できる。
ふと、当然の疑問が生じた。
――この部屋、一泊いくらなんだろう
なんであれ、それなりのサービスには、それなりの対価が要求されるものだ。
シルビアの話では、暫くはここに逗留するとのことだったが、これほど豪華な部屋に長期間滞在するとなると、出費は相当額に上るのではないだろうか。
――なぜ、今まで考えもしなかったのか。
○○は、愕然とした。
確かに最初は、すべてを失った状況に溺れ、人のことを考えている余裕もなかったとはいえ、安易に同行を願い出た自分のために、シルビアの強いられた負担は計り知れない。
ここまで彼は毎回『まともな』宿を取り、さらには○○と部屋を分けて宿泊している。
出費だけでも相当額に上るはずだ。