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【DQ11】星屑の旅人

第2章 デルカダールへ


シルビアが懇意にしている宿は、デルカダールの歓楽街にほど近い一角にあった。
外観は周囲の民家とほぼ同じ、景観保護のため看板も小さく、宿泊施設の割に非常に分かりづらい。
ただしこの佇まいと、賑やかな通りを一本外れている場所柄から、一見客はほとんどおらず、常連ばかりが集う落ち着いた穴場になっている。
「お久しぶりね」
シルビアがドアを開けると、ベルの音とともに赤らんだ丸顔の男が真っ先に出迎えてくれた。
「シルビアさん、お待ちしてましたよ!」
どうやら宿の主人らしい。
おおい、と男が軽く呼びかけると、奥から使用人が心得たように足湯の桶を持ってきた。
主人はシルビアの荷物を丁重に受け取りながら、
「興行主さんから連絡頂きましてね、今か今かとお待ちしておりましたよ」
「あら、そうなの?のんびり町回りで来たからちょっと遅れちゃったの、ごめんなさいね」
「いやいや、お気になさらないでくださいまし」
昨今は物騒ですから、と深く頷く主人。
そして、初めて○○の存在に気付いたように、
「おや珍しい。お連れ様ですか。」
眉を上げて見せた。○○は軽く会釈をして
「○○と申します。訳あって、シルビアさんとご一緒させて頂いてます」
簡単な礼をした。シルビアは○○の肩を掴んで引き寄せると、
「そうなの。この子ね、南で魔物に襲われてご家族とはぐれちゃったんですって」
さらりと助け舟を出した。
主人はいかにも気の毒そうに眉をひそめ、
「なんとそれはまあお辛いことで…」
○○の手を取って
「ともかくもご無事でようございました。手前にも同じ年頃の娘が居りますので…他人事ではありません」
悲痛極まりない面持ちである。心底から同情してくれているらしい。
シルビアは手をヒラヒラ振り、
「そういうわけでご主人ちゃん。しばらく滞在させてもらいたいのよ。大人二部屋、用意できる?」
「二部屋…でございますか」
主人は途端にばつの悪そうな顔つきになった。
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