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【DQ11】星屑の旅人

第2章 デルカダールへ


――気のせいかしら。
一帯に漂う妙な違和感は、○○に対する無遠慮な気配だけではなかった。
街の空気自体がどうもおかしい。肌で感じるほど物々しい緊張に満ちている。
「兵隊さん、多いですね」
「え?」
思いもしない一言を発したのは、ほかでもない○○だった。
「なんですって?」
向き直ったシルビアに、
「あ、いえ…何となくです。多いなって」
少し戸惑ったように答える。
言われてみれば確かに、街を闊歩する兵士の姿は目立った。数も装備も、一歩間違えれば戦時配置並みである。
ふむ、とシルビアは頬に手を当てた。
「王都の出入り口…だからかしら」
「そうなんですか?」
昨今、魔物による都市の襲撃は珍しくなくなってきている。正門付近を警戒して重装兵を多く配置するのは、決しておかしな話ではない。
ただ市街地に入るとまた事情が変わった。
同じくかなりの人数の兵がそこかしこを闊歩しているのだが、その装備にシルビアは息を飲んだ。

――近衛だわ

「どうしました?シルビアさん」
「ん?大丈夫、何でもないわよ」
と、いいつつも、ここへきてことの異常さを確信する。
有事でもないのに市街地に近衛兵が放たれているなど、普通考えられない。
「何かあったんでしょうか…」
○○は不安げにシルビアを見上げた。
「うーん…」
答えに詰まるシルビア。住民たちの表情にもどことなく緊張がある。それでいて、みな示し合わせたように平静を装って普段通りに街路を歩き、商いの暖簾を掲げ、花を愛で噴水に憩っているのだ。
少なくとも、近衛が市街を警戒するような状況下の態度ではない。
「…宿を取りましょ。とにかく泊まるところをきめないと」
いずれにせよここで考え込んでいても仕方がない。
シルビアは荷を背負いなおした。
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