第9章 邂逅
「冗談じゃないわ。絶対にダメ」
○○の手首をつかんだシルビアの手に、そっと触れるものがあった。
「あの」
――イレブンだ。たしなめるようにシルビアの手を掴んでいる。
「詳しい事情は分からないんですが。その…○○?」
「は、はい」
「――僕はついてきてもらって構わない」
その一言に、シルビアとカミュの声が重なった。
「何ですって」
「何だと」
イレブンは首を振ると、シルビアに向き直った。
「うまく説明できないんですが――」
言葉を切って、
「彼女、○○は、どうしても連れて行った方がいいような気がするんです」
おいおい、とカミュは両手を上げる。
「そりゃ、『勇者サマ』の勘ってやつか?」
「どうなのかな…僕も分からないんだけど。」
○○は、唇を噛んでイレブンを見た。一瞬交差した視線が、また重く絡む。
断ち切ったのは、シルビアだった。
「あのね、言い出しといてごめんなさいね、でも、付いていきたいとか連れて行きたいとかそういう問題じゃないのよ。」
イレブンの手を丁寧に外すと、○○に向き直った。
「いい?○○、ここから先は今までの旅とは話が違うの。魔物退治よ」
「シルビア、でも私」
○○の言葉を押し込むように、シルビアは首を左右に降った。
「女の子には危険すぎるわ。いい子だから、宿に戻って、待っていてちょうだい、ね?」
しかし、その反論は思わぬところから現れた。
「いえ、シルビア様。そうとは限りませんわ。」
──金髪のたおやかな乙女──セーニャだ。
横から○○の両手を取ってしげしげと眺めつつ、
「…ベロニカお姉様もご覧になって。この方…○○様はかなり魔法の資質がおありのようです」
ベロニカまでつま先立ちになる。
「あら、ほんとね!○○だっけ、あなた魔法って分かる?使ったことある?」
矢継ぎ早に尋ねると、○○はおろおろとシルビアとベロニカを見比べた。
「い、いえ、知ってはいますが、一度も…」
「そうなの?勿体ないわね。今どき、魔法くらい淑女のたしなみよ。○○さえよければ、解除の儀式、やってあげるわ」
「名案ですわ!お姉様」