第9章 邂逅
「一度、お会いしましたね」
「はい…」
俯く○○と、イレブンを見比べて、ベロニカがおしゃまな笑顔を浮かべた。
「あらイレブンったら。隅に置けないじゃない」
「あ、いや、そういうんじゃないんだよ、ベロニカ」
慌てるイレブンの横から、今度はシルビアが○○を軽くねめつけた。
「レースより先に会ったことあるの?…それは初耳ねえ。○○」
「いやその、ほんと一回ちょっとすれ違っただけというか」
「そのわりには 随分ご執心みたいでしたけど?」
「え、あ、その…本当にそういうんじゃ無くて」
カミュが両手を大きく振って、
「あーもう。痴話げんかなら余所でやってくれ、オッサンたち。――俺たちは急ぐんだ。」
なあ、イレブン、とその肩を叩く。
イレブンは小さく咳払いをすると、
「…シルビアさん。と、それからええと、そちらの…」
「あ、あの。○○です。」
「○○、さん」
「○○で、大丈夫です…」
「じゃあ○○。お二人とも、僕たちと来るつもりですか」
シルビアは、腕組みをしたまま片眉をあげた。
「アタシはね。ああでも、○○は…」
「私も行きます」
「そう。この子も一緒…って、○○!?」
とシルビアは○○の肩を掴んだ。
「会うだけでしょ。ダメよ絶対。危険すぎる。宿で待ってなさい」
「ごめん、シルビア。でも私、どうしても今度はついていきたい。」
○○は、イレブンを見た。
――どうしてだろうか。
このイレブンという青年を見ていると。
彼から決して、離れてはいけないような気がする。
――会ったばかりなのに。
――ろくに言葉さえかわさないのに。