第9章 邂逅
あっけに取られていたシルビアだったが、すぐに姉妹と○○の間に割入った。
「ちょ、ちょっとちょっとベロニカちゃんにセーニャちゃん」
「なあに、シルビアさん」
その背で庇うように、二人の視線から○○を隠しながら、
「悪いけどこの子はいいの。アタシが守るから」
あら、と腰に手を当てたのはベロニカだ。
「…守れるなら連れてってあげればいいじゃない」
「限度があるわ。そんな無責任なことできないわよ」
無責任ですって、とベロニカは更に眉を釣り上げた。
「シルビアさん、この子あなたの旅の連れなんでしょ?」
「そ、そうだけど」
「これまで剣一つ魔法一つ教えてあげなかったの?このいかにも弱っちそうな、一人じゃ生きてけなさそうな、セーニャより頼りなさそうな子に」
悪気はないのだろうが、言い草である。○○は俯いた。セーニャも
「お、お姉様…」
はらはらとやり取りを見守っている。シルビアは、幼女らしからぬベロニカの気迫に多少気圧されつつも、
「あ、当たり前じゃないの。そんなアブナイこと教えて万一のことがあったら…」
違うでしょうが、とベロニカは頭を振った。
「あっきれた。それこそ究極に無責任じゃないの?○○が一体あなたの何なのかはさておき、このご時世で旅に連れてくるならいざって時に自分で自分の身をどうにかできるくらいのことは覚えさせなきゃ駄目でしょうが!」
「そ、それは…」
「○○はシルビアさんの『仲間』なんでしょ、違うの?」
言葉を失うシルビア。○○は、シルビアの背に遮られながら、ベロニカを見た。
ベロニカは憤然と、
「ねえ。○○、きっとあなたにも事情があるのよね。こんなところまでイレブンを追いかけて来るくらいなんだもの」
ベロニカは、イレブンを見て、○○を見た。
小枝のように華奢な両腕をきっぱりと組み合わせて、
「でも、このいかにも過保護なシルビアおネェさんが、大切に大切にし過ぎてるのねきっと」
その隣でおっとりと両手を重ねたセーニャが、
「確かに、シルビア様はまるで○○様のお母様のような印象がありますわね」
綿毛のように微笑む。