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【DQ11】星屑の旅人

第9章 邂逅


しかし、わずかな間をおいてシルビアが立ち上がると、刹那の緊張はほどけた。
「あ…アンタは確かサーカス団の…」
なんつったかな、と青髪の青年がこちらを指さした。
「シルビア様!この方は確か、売れっ子旅芸人のシルビア様ですわ、カミュ様。」
にっこりとほほ笑んだのは、例の金髪の乙女だ。その隣から幼女も、
「あーっ!思い出したわっ!シルビアさんだっけ。あなた確か、レースにも出てたわよね?すごかったわ。イレブンが負けちゃうんじゃないかって、あたし何っ回もひやひやしちゃったんだから!」
シルビアに向かって小さな指を振りかざした。
「あらん、ありがとうレディたち!覚えててくれたなんて嬉しいわん!」
シルビアは両手を組んで身をよじる。カミュがわずかに身を退いた横で、イレブンはきょとんと瞬き一つ。
「…驚かせちゃってごめんなさいね。改めて、アタシはシルビア。ご存知の通りの旅芸人よ。」
レディたちのお名前は?と尋ねる。少女たちは顔を見合わせると、それぞれ、
「あたしはベロニカ。」
「私は、セーニャと申します。」
シルビアがにこにこと握手を交わす横で、カミュ、と呼ばれた例の青髪の青年が頭を掻きながら、
「まってくれよ、その…シルビアのおっさん」
「あらおっさんとは失礼ね。カミュちゃんとやら」
「カミュちゃん…!?」
整った顔をひきつらせて、カミュは半身後ずさった。
「い、いや、その、そんなことより。あんた何なんだ一体。いきなり降ってきて」
「素敵な登場だったでしょ?」
「そうじゃねえよ」
──カミュは、一度イレブンを見た。
「まさか、とは思うが、俺たちについてくるつもりなのか」
「あら、話が早いわね。お察しの通りよん」
長い指をカミュの鼻先に突き付け、シルビアは笑う。
「…お坊ちゃんと一緒に、魔物退治に行くんでしょ?」
「何でそれを」
カミュの顔に動揺が走る。ようやく年相応の表情である。シルビアは背筋を伸ばして、両腕を組んだ。
「…ふふ。見てたから。」
と、やり取りを見守っていたベロニカが、小さく鼻を鳴らした。
「ふぅん…スーパースターって随分いい趣味してるのね?」
夜明け色の瞳には、あからさまな懐疑の色が浮かんでいる。
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