第9章 邂逅
鉄のきざはしをどうにかこうにか登りきると、門の上端に突き出した○○の顔をめがけて、強い熱風が襲った。遮られることなく灼熱の砂漠を吹き抜けた風は、焼けた鞭のように剥き出しの肌を打った。思わず腕で顔を庇うと、
「わっ…!」
バランスを崩し、仰け反りかける。
「大丈夫?」
シルビアがすぐに腕を捉えてくれた。そのまま、引き上げられて門を越える。
どうぞ足場に、と言わんばかりの巨像の上に降りた○○は、滑り落ちないように、丸みを帯びた像の頭部で、注意深く身を屈めた。
流石にシルビアは高所慣れしているのか、
「あら?あれは…」
膝立ちになって手で目庇を作る。
「…お坊ちゃんだわ」
「えっ!」
「ほら、あそこ」
○○の横にしゃがむと、指先で示す先にはなるほど、数名の兵を伴った、派手な身なりの青年が立っていた。
腕組みをしつつ、いかにも落ち着かない様子で、左右に行きつ戻りつ、
「…何か待ってるみたいだね」
「何ですって?」
シルビアは、○○に向き直った。
「どういうこと?○○」
「え?いや、なんとなくだけど…」
と、○○は王子たちをもう一度見やった。
「さっき、憲兵さんが言ってたよね。王様から王子に、そろそろ魔物退治の命令が出るって」
「ええ、そうね」
「王子様がここにいるのはそれが理由として、でも、首都を封鎖するくらいの魔物なんだよね?さすがにあの人たちだけっていうのは、少なすぎない?」
──なるほど。
シルビアは頷いた。
「…ホントね。アナタの言う通りよ」
供連れらしき兵士の姿は、その錬度も数も、いかにも心許ない様子がある。○○は口元に手を当てて、
「援軍…を待ってるとか?」
「そうかもね…だとすると弱っちゃうわ」
シルビアは、頬に手を当てて眉をひそめた。
こちらも一応不当に出国しかかっている身である。
これ以上人目が増えては、イレブンたちを探しに行けない──
と、そのときだった。