第9章 邂逅
そして明くる日となった。
王都の出入り口に当たる正面大門がちょうど開く頃合いを見計らって、二人は宿の外に出た。太陽はすでに登っているものの、まだ山際に留まり城壁を越えるには至らない。
街は薄明かりの中にあった。
大通りはいつも通りの人出で賑わっている。
○○はふと、覚えのある違和感を感じた。
「…ねえ、シルビア」
○○はシルビアを見上げる。シルビアも気づいたらしくひっそりと眉を寄せ小さく頷いた。
――大門に開く気配が見えない。そして各所を闊歩する衛兵の姿――
「…ちょっとそこの衛士ちゃん」
シルビアは、椰子の木陰に立っていた歩兵を見つけて声をかけた。
兵は突如現れた大柄な旅芸人に、一瞬虚を突かれた様子だったが、すぐに威儀を正すと
「…何だろうか」
至極真面目に答える。
「…何かあったの?街中ピリピリムードみたいだけど」
「む…」
兵士は、少しばかり思案した。シルビアは両手を腰に当てると、
「…門が閉まってて困ってるのよ。」
まさか開かないわけないわよね、と顔を顰めてみせた。
兵士はシルビアの全身をまじまじと眺める。旅芸人の装束と分かると納得したように
「残念ながら、その通りだ。今日の一般通行は全面的に制限されることになっている」
へえ、とシルビアは眉を上げた。
「ずいぶん気軽に言うけど、大ごとよ?皆困るんじゃないの?」
――実際門の近くでは既に、こぜりあいめいたやりとりが吹き上がっていた。
どうしても今日の朝にはサマディーを出たい人々――商人や旅人たちがそこかしこで衛兵たちに詰め寄っている。
眼前の兵士はやや苦い表情で状況を眺めわたしつつ、
「致し方ない。実はこの王都から遥か北の砂漠…バクラバ砂丘で魔物が暴れているという知らせが入ってな」
今の段階ではあまり不安をあおりたくないのだろう。口調は躊躇いがちだった。
「…あらっ?そうなの?」
シルビアは頬に手を当てた。