第9章 邂逅
こぶしを握り締め、唇をかすかに震わせて、○○は言った。
「ねえ、シルビア。会えないかな。私、その人に」
「…○○?」
シルビアは、○○の両肩に手を置いて、
「どうしたの?急に」
――そっと彼女の顔を覗き込む。
が、そこに答えはなかった。○○はシルビア以上に戸惑った様子で、
「…ごめん。あの、自分でもよく分からないんだけど」
――ただ会いたい、会わなければならない気がするのだという。
「それは…」
と言って、シルビアは口をつぐんだ。
――何か思い出した、のかしら
確かめるのを躊躇った自分を打ち消すように、シルビアは首を振った。
「…分かったわ。街を探してみましょうね」
「…いいの?」
シルビアは揺れる○○の瞳を正面から受け止める。
「いいのよ」
自分にも言い聞かせるようにきっぱりと言った。
「…ただし、どんなに早くても明日よ。朝一で、門前広場の方に行ってみましょう」
「わかった、ありがとう」
シルビアは、首を左右に振った。
「――アタシももう一回、会ってみたいと思ってたし」
そう。この言葉は真実だ。
○○には告げなかったが、シルビアもまた、あのイレブンという青年には強い興味を抱いていた。
――不思議な子。
それは初めて○○と出会った時と、よく似た感情だった。
そしてほとんど直感的に、シルビアは理解していた。
イレブンと○○の根底に流れている何か。
それは同じか、あるいは非常に近しい性質をもっている――