第2章 二ヶ月目の戦い
今、松野家にはカラ松さんと私しかいない。
他の四人は遊びに行った。多分、子猫の相手が面倒で逃げたんだろう。
カラ松さんは、どうやら子猫のお守りに残されたらしい。毎度、貧乏くじな人だ。
とはいえ、さしもの彼も本物の『子猫ちゃん』相手に四苦八苦である。
きっと他の兄弟をうらやみ、自分も遊びに行きたいと思っているんだろう。
お、ネズミを捕まえた! てしてし。
『××××××××』
何だか拍手された。そして子猫相手だろうとキザに前髪をなでつける。
『×××××、×××××』
多分痛い発言をしてるんだろうが、サイレントな状態だと、痛さがない。
何だかんだで私の相手をしてくれるとか、実は良い人?
申し訳なくなってきて、足にすりすり。抱き上げられたので顔を舐めてあげる。
あ、嬉しそうだ。ゴロゴロゴロゴロ。
ひたすら喉を鳴らす子猫に、カラ松さんは顔をほころばせるのであった。
『少し休むか?』
カラ松さんが畳の上に横になったので、私もぴったり寄り添ってゴロゴロ。
んん? 腕を出された。前足で踏み踏みすると笑い声。
……まさか、腕枕のつもり?
『ここで寝ると良い、子猫ちゃん』
えええー。あ、ちょっと。腕を動かないで下さい。
慌てて前足でカラ松さんの腕をホールドし、そのまま一緒に横になる。
腕を舐め、ゴロゴロ。背中を撫でられゴロゴロゴロ。
カラ松さんは笑っている。
『×××××、×××××』
優しくされ、私はふわふわした気分で寝てしまった。
…………
…………
『…………』
凶悪である。食卓の雰囲気は凶悪だった。
『××……、×××××、×××××』
カラ松さんが何か言う。
『×××××!?』
一松さんが何か答える。
『!!……、×××××……』
ビクッとし、うつむいてボソボソと返答するカラ松さん。
他の兄弟達は下を向き、無言で夕食を食べている。
いったいどうしたんだろう。私はにゃー、と鳴く。
カラ松さんの胸元で。
一松さんは夕方頃、大急ぎで帰ってきた。
ほぼ徹夜に近い状態だっただろうに、私を戻す方法を探してくれたのだ。
だがその努力が徒労に終わったことは、猫でも分かった。