第2章 二ヶ月目の戦い
『××××!!』『××××!? ××××!!』『××××っ!!』
周囲では罵り合いが繰り返されているが、推察したところで意味のない内容であろう。
やがて一松さんが私を置き、立ち上がる。
『××××、××××××××』
何かを五人に言い、部屋から出ようとする。
私は慌てた。
ままま待って! 一緒に行く、一緒に行きますから!!
必死に追いすがるが、足ではらわれる。
『僕といようよ』と、十四松さんが私を抱き上げるが、私は大暴れ。
いやあー!! 一緒に行くー!! 一松さんについていくーっ!!
あまりの鳴き声に、さすがの十四松さんもちょっとうるさそう。
あ。力がちょっとゆるんだ!!
私は十四松さんの腕から逃げ出し、全力で走って一松さんのジャージにすがる。
お願い! 置いてかないで!! 一緒にいたいっ!!
ジャージをつたって上着にたどりつき、肩にしがみついて鳴きまくった。
『…………』
一松さんの大きなため息。
お? 何か浮遊感。
そして床に置かれる。でも私は一松さんの匂いに包まれている。
ごそごそと動いて顔を上げると、一松さんが紫のつなぎに着替えているのが見えた。
どうやらご自分のパーカーを脱ぎ、私ごと下に置いたらしい。
私は一松さんの匂いに、とりあえず一安心。
パーカーを踏み踏みし、いいあんばいにする。
ふぁ~。朝から暴れたんで、ちょっと眠くなってきたかも。
パーカーに埋もれ、丸くなった。
『×××、×××××。××××××××』
少し優しい声。一松さんが背中を撫でてくる。
私は嬉しくなって顔を上げ、一松さんの指を舐める。ゴロゴロ、すりすり。
ついでにお腹を見せて尻尾をぱたぱた。
でも一松さんはそのまま出かけていってしまった。ちぇー。
私は再度パーカーのベッドに潜り込み、すやすやと寝てしまった。
…………
…………
目の前をチラチラと猫じゃらしが動く……てい! あ、あれ? てい!!
こら逃げるな、ていっ!! てい!!
必死に追いかけ追いかけ……ちょっと飽きた。
動く猫じゃらしに興味をなくし、目の前のふすまにうずうず。
『っ!! ××××!!』
慌てたような声がし、目の前をネズミのオモチャが滑っていく。
待て待て!!
ホッとしたような顔になるのはカラ松さんだった。