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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 だんだんと、こんなことを言われてるんじゃ?的に分かるようになってきた。

『男六人寝てるから、おまえをつぶすかもしれないし』
 大丈夫大丈夫、離れて寝ますからー。
『仕方ない子猫ちゃんだ。さあ、おいで』
 あ、カラ松さんだ。この際カラ松さんでもいいか。わーい。

『おいクソ松! 勝手なことしてんじゃねえよ!!』
 うわ、一松さんがカラ松さんに殴りかかった。
 放り投げられた私を、十四松さんが華麗にキャッチ。
『じゃあ僕と寝よう、僕と!!』
 い、いや、十四松さんは寝相悪そうだしなあ。

『仕方ないなあ、じゃあ俺と寝ようか。俺なら一番寝相がいいし』
 それはどうでしょうか、チョロ松さん。
『もう面倒くさいから、紐つけて柱につないどく?』
 相変わらずシビアだなあ、トド松さん。
『ほら、皆静かに……ごふっ!! てめえ、長男に何しやがる!!』
 どうやらケンカのとばっちりを受けたようだ。

 ケンカ勃発(ぼっぱつ)。

 ああ、皆、私のために争わないで!!

 私はにゃーにゃー鳴きながら布団の上を走り回り。

 ……この布団、人肌のぬくもりが残ってる。
 あ、この匂い、一松さんだ。ゴロゴロ。
 激しいケンカの起こる真横で、私は身体を丸めて寝てしまった。

 …………

 次の朝、私は一松さんのパジャマの中にいたのだった。
 一松さんの目の下にはクマ。私を恨めしそうに見ながらブツブツ何か言っている。
 もしかして動いたら私をつぶすんじゃないかと心配で、眠れなかった?
 いいじゃないですかー、どうせ無職なんだし。

『××××××!!』

 恐らく、こちらの思惑が通じてしまった。
 コツンとやや強く殴られた。動物虐待っす。

 で、いつ元に戻んの?

 にゃーにゃーにゃー。

 一松さーん。ごはん、まだですかー?

『ちょっと待ってて。今やるから』

 おお!お皿にとくとくと子猫用ミルクが注がれる!!
 頭を突っ込む勢いでピチャピチャ舐めた。
『床にこぼれる』
 にゃー。

 そして目の前にエサが置かれる。市販のペットフードでは無い。
 肉や魚、あと少量の野菜を柔らかく煮込み、薄味をつけた手作りフードである。
 お母様の手作り猫まんま! マジで『子猫=松奈』という認識があるのか?

 さ、さすが六つ子の親。
 がっつく私をお母様はニコニコと見守るのであった。

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