第2章 二ヶ月目の戦い
「変なこと考えてないで、せっかく外に出たんだし、どっか行こう。
またゲーセンに行く? それとも子猫を見に行く?」
え? 子猫!? 見たい見たい!!
……う、ううん。それはそれで楽しいんだけど。
でもデートコースがいつまで経っても、活動範囲内から一歩も出ないというのがなあ。
たまにはもっとこう――。
「……。そんなに不満なら、ほら、口を開けて」
「え? あーん」
パクリ。何かが口の中に入った。つい飲み込んでしまう。
見ると一松さんが嫌そうな顔で瓶を見ていた。
「言っとくけど、この薬が安全かっていう根本的な問題もあるからね?
こういう怪しい薬って、変なのが入ってたり、危険な薬が混じってたり……」
ん? 何か身体が変だな。
一松さんの語尾がどんどん小さくなっていく。
なのに一松さんが急に大きくなっていく。
「……? ×、××××!? ××××××××? ×××××!! ××××!!」
はて。一松さんが何を言ってるか分からん。何コレ、どうなったの?
「××、×××××!! ××××!!」
一松さんの声が、彼らしくなくものすごく慌ててる。
表情はもう見られない。てか足が見える。いつものサンダル。
何だろう。身体をこすりつけたくなってくる。すりすり。
「××××!!」
名前を呼ばれた気がした。
なので、応えておいた。
にゃー。
…………
何だか知らんが、通販の薬を飲んだら子猫になった。
まあ、次元転送装置があるし、美少女になったし、平成生まれ昭和育ちの六つ子がいるし。
人間が子猫になるのも、この世界ならよくあることなんだろう、多分。
『××××、××××ー!?』
私たちは松野家に戻ってきて、残りの六つ子とご対面。
私は一松さんの腕に抱えられ、ゴロゴロ。
「×××、××、××××!?」
頭を撫でられ、何か話しかけられるけどゴロゴロ。
一方、一松さんは薬を出して何か説明していた。
それからさらに大騒ぎ。何人かは家の外に行ってしまう。
一方私は、一松さんのお顔を舐めようと忙しかった。
一松さんは、困り切って私を見下ろしていた。