第2章 二ヶ月目の戦い
次の日の河川敷にて。
「こいつはもう、おまえと仕事しないから」
「ええ~。せっかく常連もついたのに~?
わ、分かったざんすから! そんなに睨まないでほしいざんす!!」
イヤミ社長は一松さんがちょっとすごんだだけで、アッサリと私の退社を認めた。
「あとその薬を渡せ。こっちで処分する」
「だ、だけどこれはすごく高く――分かった! 分かったざんすよ!
もう退職金代わりに持ってけばいいざんす~!!」
イヤミ社長、半泣きである。
しかしそれ以上に一松さんに対し、猛烈に怯えているみたいだが。
何かあったんだろうか。まあいいや。
「行くよ」
「はーい」
イヤミ社長に目で謝りつつ、一松さんについていく。
昨日のツケ払いで、やっと出来た貯金もゼロに逆戻り。
あと一ヶ月半で三百万かあ。
博士はもう機械だけ借りちゃったそうだ。
他の部品類も用意して一ヶ月半後にこの町に戻るらしい。
機械を使用するためのパスコードは、三百万をあちらに払ってから。
お金を用意出来なかったら?
機械は即返却。二度と借りられなくなるかもって。
何を言いたいかと言えば、元の世界に戻るのは、多分ワンチャンス。
どうしたものか、と思いながら一松さんについていく。
「あれ? その薬、どうするんですか?」
すぐ捨てるかと思いきや、一松さんは薬の瓶をポケットにしまっていた。
「こんな薬なら、買いたい奴もいるでしょ」
「あ、それならもう一度飲んでみていいですか?」
「は?」
私はできる限り可愛く、腰をくねくねさせ、
「いいじゃないですか。変なことはしませんよ。
ほらほら、美少女になった私とデートしたくないですか?」
えへ☆
「いや別に」
即答! だが、これは喜ぶべきなのか?
「薬をこっそり何錠か抜き取って、自力で商売しようとか考えてないよね?」
す、鋭いっ!! 一方、一松さんは私をじーっと見て、
「前から思ってたけど。おまえ、俺ら並みにクズなところあるよな」
おいーっ!!
「人生最大の侮辱です!! 人間として言ってはいけない最後の一線というものが
あるでしょう!! 私のどこが、あなた方に似ていると仰るんです!!」
「そういう返しが、一瞬のためらいすらなく出るところ」
私のポカポカ攻撃を胸で受けながら、一松さんは冷たいお顔だった。