第2章 二ヶ月目の戦い
「ねえ」
「わっ!」
いつの間にか、一松さんが真っ正面にいて驚く。
「そろそろ話してくれていいんじゃない?」
松野家に、いやこの町に来た理由? うーん。
口ごもっていると一松さんが『話せないんだ。じゃ、質問変えるけど』と冷たく、
「いつまでうちにいるの?」
言葉が突き刺さる。出て行け、という意味ではないと分かっていても。
「一松兄さん、一松兄さん、そうじゃないよ。
そういうときは『いつまでいてくれるの?』だよ!」
涙が引っ込む。十四松さんはテンションが高い。
「……。で、いつまで?」
「もうちょっとです」
一松さんの表情に変化はなく『そう』とだけ言った。
「じゃあトランプしよう、トランプ!!」
何が『じゃあ』なのか。十四松さんがトランプを乱雑に切りだした。
「あ、三人だけでズルい!!」
「俺たちも混ぜろよ!!」
ふすまがガラッと開いて、四人がドヤドヤと入ってきた。
まさか外で聞いてた?
けどにぎやかにポーカーが始まり、何もかもが、うやむやになっていく。
「私、ロイヤルストレートフラッシュです。じゃあ賭け金いただきますね♪」
「松奈すっげーっ!!」
「ふっ! おそ松の目はごまかせても、俺の目はごまかせないぜ!」
ギクッ!
「懐から何か出してたよね、松奈? 言っとくけどうちのスペードのA、イカサマが出来ないよう傷をつけてるから。ちょっと君のカード、よく見せてくれる?」
「何てひどい! 妹を疑うんですか!? 出て行って下さい、皆ひどい!!」
「その間に本物のカードとすり替えようとしない!! おい一松!」
「うわ!! 一松さん、DVですよ、DV!! こぶしが!! こぶしのグリグリがこめかみにっ!!」
「言い方が何かいやらしいよね、おそ松兄さん!」
「ねえ松奈、こいつのS○Xって、どんな感じ? 変なプレイとか強要されてない?」
「あんまりホテルとか行ってないみたいだけど、我慢出来なくなったら、やっぱ外でやっちゃう?」
「うわー、引く。通報されてもちゃんと偽名を使って、僕らに恥をかかさないでね!」
「うるせえ、おまえら!!」
「痛いー。あとセクハラっ!!」
泣き声、笑い声、怒声が交錯する松野家の夜であった。
あと賭けポーカーは犯罪です。
良い子はバレないようにイカサマをしましょう☆