• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 次の日、起きてみると私はきちんと布団に寝かされていた。
 不思議なことに、庭にはまたズタボロにされた一松さんが転がっていた。
 私はそれを横目に歯を磨きに行く。
 

 今日も松野家は平和であった。

 …………

 私の部屋で、私と一松さんは向かい合って正座していた。

「じゃ、もう変な仕事はしない?」
「しません、しません」
「約束する?」
「します、します」 
「じゃ、指切り指切りっ!!」

 最後にテンション高く叫ぶのは、十四松さん。
 大事な話の最中だが十四松さんがいる。何でかって。
 かつて私たちの関係が知られたとき、長男が大声で言い放った。

『二人がつきあうのは許してやるが、家をラ○ホにするのは許さーんっ!!』

 何であんたの許可がいるんだ、おそ松さん。

 とはいえ、彼のデリカシーゼロな宣言は、他の六つ子から熱狂的な賛同を得たらしい。
 私たちは基本的に、家の中で二人きりになるのを禁じられている。
 一松さんが用あって私の部屋に来るとき、十四松さんを連れてくるのが慣例になっていた。

 で、『レンタル妹』を辞めろって。

「ん」
「あ、はい。指切りですね」
 まじめに小指を出され、絡める。あ~、何か少女漫画って感じでドキドキするなあ。

「ゆ~びきりげ~んま~ん」

 陰鬱な歌声が響き渡るまでは。
 一松さんの顔は笑顔ゼロ。シュールだ。拷問だ。

「う~そついたら×××××飲~ます~」
 下品な替え歌までしてやがる。冗談のつもりならカラ松さん並みの痛さ。
 十四松さんもいるっつうのに。
 ちなみに十四松さんは目を輝かせ、歌に合わせて手を叩いている。
「ゆ、ゆびきった……」
 どうにか歌を終わらせ、ちゃぶ台に身を投げ出す。

「でさ。本当に何で大金が必要なの」
 あ、肩もんできた。う。いい! そこもっと強く!!

「あ、ええと……」
「もしかして、うちに来た事情がらみ?」
「…………」
 確かにそうなんだけど、一松さんの想像する『事情』と私の『事情』は絶対に違う。

「うちには男が六人いるし、金策を頼める知り合いもいるから、協力出来るけど」

 うーん。借金が出来たところで踏み倒し確定だし。
 まさか博士に代わりに返済しろとか言えないしね。

/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp