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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


「この外見なら、もうすぐ戻りますよ……ほら」

 ポンッと音がして、平凡な私に戻る。
『あ~あ』
 コラ、がっかりした音を出すな、クソ兄ども!! 何か傷つくしっ!!

「今の方がいいよ」

 ボソッと呟く声。一松さんが私の横に来ていた。
 ま、またお約束な、と思いつつ、顔がどうしてもニヤけてしまう。
 そこでおそ松さんが、気まずそうに、

「あ、あのさあ。松奈。このことは母さんには内緒に……」

 成人男性が母の顔色をうかがう滑稽(こっけい)さよ。

「ご安心下さい。一から十まで全暴露です」

『松奈ーっ!!』

 六つ子に泣きつかれ、しばし優越感を味わう私であった。

 …………

 …………

「それで、何すか。このプレイは」
 自室に戻り、パジャマに着替えた私は、お布団に正座している。

「……人身御供(ひとみごくう)」

 目の前には一松さん。
 畳に縛られた状態で転がっている。
 そう、彼は縛られている。

 ついさっき、ふすまが開いて、何かが投げ入れられたと思ったら、一松さんが転がっていた。パジャマ姿+なぜか紫のリボン。全身をグルグル巻きにされている。
 どういう趣味だ。本当にAV見過ぎだな、クソ兄弟!!
 兄弟の一人を差し出す理由が『親にバラされたくないから』というのも涙を誘うし。

 そして一松さんが、何かを期待するように頬を紅潮させているのは何故。

「静かにやれば、下の階にバレないと思うけど」
 止めんか!!
「こっちは男じゃ無いんだから、こんな真似されて嬉しいワケが無いでしょう」
 と一松さんのリボンをほどいていく。

「ええー」
 いや、なぜガッカリしたような声を出す一松さん。

「でも」
 と解放した一松さんに抱きつく。
「っ」
「膝枕させてくれるなら黙っていてもいいですよ」
 一松さんを座らせて、頭を乗せる。
「…………」
 ためらいがちに髪を撫でてくる。
「えと。あの仕事は、危ないから辞めた方がいい。いや、辞めろ」
 あったかいあったかい。しびれて立てなくなるまで、膝枕をしてやろう。
「大丈夫、大丈夫」
「ティッシュ配りでも問題無かっただろ。何でそこまで金がいるの」
「それはですね――」
 答える前に寝てしまった。

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