第2章 二ヶ月目の戦い
何がどうしてこうなった。
あまりのことにお口を開けて見ていると、チビ太さんが私に気づいた。
もちろん、今は『美少女薬』の効果が切れているので、彼に私が誰かは分からない。
「ん? ああ、心配しねえでくれ、こいつらはツケをためすぎだからな。
これは正当な取り立て行為だ!」
ンなわけがあるか。だが、ダメダメな六つ子も私に気づいてしまった。
「松奈~!! 頼むから助けてっ!!」
空気を読めや、おそ松さんっ!! チビ太さんも、
「嬢ちゃん、こいつと知り合いなんでい?」
「まさか。こんな社会のクズ連中、すれ違っただけで通報してますよ」
「だよなあ、あっはっはっは!!」
「あはははははは!!」
『おいーっ!!』
なごやかに笑いあい、その場を離れた。
そして角を曲がったところで、立ち止まる。
背後からは悲鳴と、私を呼ぶ声。
……仕方がないなあ。
私は急いでふところを探る。
「あった」
延長があったとき用に、イヤミ社長からもらっておいた、予備の『美少女薬』だ。
私はそれをぱくっと飲み込み、
「チビ太お兄ちゃ~ん♪」
と、笑顔で飛び出した。
…………
その後の交渉の末、持っていた数日分の稼ぎを利子分として差し出した。
で、どうにか一旦許してもらえた。
解放された六つ子に正体をバラし、私たちは家路につくことになったのだった。
「お友達とはいえ、お金はちゃんと払うもんですよ」
暗い夜道を歩きながら、私は苦言を呈する。
「えへへ。本当に可愛いね。妹にツケを払わせちゃって本当にごめん~」
外見が変わったとたん、デレまくりだなあ、おそ松さん。
「どうか礼をさせてほしい。夜景のきれいなバーに行かないか?」
止めて。そのキーワードはトラウマなんですよ、カラ松さん。
「危ない仕事はしちゃダメだって何度も言ってるのに。何でそんなにお金がいるの?」
とチョロ松さん。こういうとき、まとめて使うためっすよ!
「松奈、松奈!! どっかに遊びに行こうよ!!」
あなたは酒が抜けてないようですな、十四松さん。
「ねえねえねえ、もう少し可愛いまんま? 二人で飲み直しに行かない?」
トド松さんは外見が良いならどうでもいいのか。
というか妹に金を出させといて、罪悪感の欠片もないな、こいつら。