第2章 二ヶ月目の戦い
チビ太さんはさらにうなずき、
「オイラには、そいつが嬢ちゃんを遠ざけてる理由が、ぃよーく分かるぜ」
「な、何ですか!?」
思わず膝を詰めて聞いてしまう。
「嬢ちゃんが高嶺(たかね)の花すぎて、気後れしちまってるんでい!」
「ああ、なるほど!!」
合点がいき、膝を叩く。
「シェー!? そこ『なるほど!!』って同意するところざんすかっ!?」
近くの茂みからツッコミが入った気もしたが、スルーする。
私の同意を得て、チビ太さんはますます得意そうに、
「まあ、そのクズにも一つ良いところがあるとしたら、身の程をわきまえてるってとこだな。
自分が地の底を這いずり回る虫だと理解してっから、強気にゃ出られねえのさ」
「聞けば聞くほど、パズルのピースがハマっていく思いです!!」
茂みからなおも『シェー!?』という叫びが聞こえるが、真っ昼間から幻聴か。
「だろお!? だがな。決して同情はしちゃいけねえ。
情があるから辛いと感じるだけでい。ダメ男はキッパリ捨てて、自分の人生を生きるんだな!!」
とチビ太さんがキメたところで、ジリリリと、ベルが鳴った。
すると茂みからイヤミ社長が出てきて、揉(も)み手ながらに、
「はい~、お時間ざんす!! 楽しいおしゃべりだったざんすか?
もっとおしゃべりしたいのなら、今なら特別料金!
延長一時間五千円ざんすよ!?」
そう言われてチビ太さんは迷う顔になったが、
「うーん……延長してえんだが、仕事があるからなあ。今日はよしとくぜ」
と言ってイヤミ社長にお札を何枚か払う。そしてチビ太さんは私に、
「じゃあ、またな」
私もアフターサービスは欠かさない。とびきりの笑顔で、
「とっても楽しかったです、チビ太お兄ちゃん!
あと、せっかくのおしゃべりコースなのに、私ばかり愚痴っちゃってごめんなさい。
お兄ちゃんがあんまり頼れる人だったから、つい甘えちゃって」
私がそう言うと、チビ太さんはみるみる相好(そうごう)を崩し、デレデレと、
「よせやい。オイラは一人っ子だから、自分で何でもやる癖がついててな!
オイラで良かったら、可愛い妹のためにいつでも相談に乗ってやるぜ!」
そして手を振り去って行くチビ太さん。
「ありがとう、チビ太お兄ちゃん!! また利用下さいね~!」