第2章 二ヶ月目の戦い
だが長兄ともなると権力者に違いない。
私は『も、もうおそ松お兄さんったら~』とあいまいに笑い、おそ松さんはうんうんと、
「じゃあ、今日はお兄ちゃんとデートしようか!」
「は?」
どう見ても暇つぶしターゲットにされています。
冗談じゃ無い。今、一松さんを探してると言ったばかりでしょうが!!
「どこに行きたい? パチンコ? 競馬場? 釣り堀? 牛丼屋?」
「どこも行きたくありません」
あと、ろくでもない生活をしてますな。
「よし! じゃあパチンコの打ち方を教えてあげよう!」
人の話を聞けやっ!!
「特別に、出る台を松奈に譲ってあげるよ。じゃ、行こうか!」
全然ありがたくないわ!! 一松さんー!!
「誰かー!」
助けを求めても、頼れない恋人は姿を見せない。
ズルズルとおそ松さんに引きずられそうになったとき。
「あ」
向こうからトド松さんが歩いてきた。
女性の方と手をつないでいる。
……デート中か。おそ松さんも気づいたのか、足を止める。
二人は、あははうふふと笑いあって、すごく楽しそう。
トド松さん、デートともなると格好もオシャレだな。
女の人も、服も顔もすっごく可愛い。お似合いだ。
近づくにつれ、楽しい会話も聞こえてくる。
「映画、面白かったね。また行こうよ」
「うん! でも次は遊園地に行きたいな。新しいアトラクションがすっごく面白いんだって!」
「よーし、じゃあ僕がチケットを取ってあげるから、次の休みに二人で行こうか!」
「嬉しい! 絶対に約束だからね!!」
「もちろんだよ!」
「…………」
「松奈~?」
おそ松さんが、恐る恐るといった風に声をかけてくる。
「あのさ、黒いオーラが出てない? 一松みたいな……」
おそ松さんたらご冗談を。
嫉妬してませんよ? 素敵な恋人たちに、嫉妬なんかしてませんからね?
私にだって素敵な恋人がいる。なのに、別のカップルにわざわざ嫉妬する意味がないでしょう?
そして距離が近づき、トド松さんが私たちを視界に入れる。
「……ゲッ!」
待て。おそ松さんはともかく、なぜ私に対しても拒否反応を示す、トド松さん。
なので、私は全開の笑顔で、
「トド松お兄ちゃーん!!」
「松奈?」
おそ松さんの戸惑いをよそに、スキップでトド松さんに近づく。