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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 だが長兄ともなると権力者に違いない。
 私は『も、もうおそ松お兄さんったら~』とあいまいに笑い、おそ松さんはうんうんと、

「じゃあ、今日はお兄ちゃんとデートしようか!」
「は?」

 どう見ても暇つぶしターゲットにされています。
 冗談じゃ無い。今、一松さんを探してると言ったばかりでしょうが!!

「どこに行きたい? パチンコ? 競馬場? 釣り堀? 牛丼屋?」
「どこも行きたくありません」
 あと、ろくでもない生活をしてますな。

「よし! じゃあパチンコの打ち方を教えてあげよう!」
 人の話を聞けやっ!!
「特別に、出る台を松奈に譲ってあげるよ。じゃ、行こうか!」
 全然ありがたくないわ!! 一松さんー!!
「誰かー!」
 助けを求めても、頼れない恋人は姿を見せない。
 ズルズルとおそ松さんに引きずられそうになったとき。

「あ」

 向こうからトド松さんが歩いてきた。
 女性の方と手をつないでいる。
 ……デート中か。おそ松さんも気づいたのか、足を止める。
 二人は、あははうふふと笑いあって、すごく楽しそう。
 トド松さん、デートともなると格好もオシャレだな。
 女の人も、服も顔もすっごく可愛い。お似合いだ。
 近づくにつれ、楽しい会話も聞こえてくる。
「映画、面白かったね。また行こうよ」
「うん! でも次は遊園地に行きたいな。新しいアトラクションがすっごく面白いんだって!」
「よーし、じゃあ僕がチケットを取ってあげるから、次の休みに二人で行こうか!」
「嬉しい! 絶対に約束だからね!!」
「もちろんだよ!」

「…………」
「松奈~?」
 おそ松さんが、恐る恐るといった風に声をかけてくる。
「あのさ、黒いオーラが出てない? 一松みたいな……」

 おそ松さんたらご冗談を。
 嫉妬してませんよ? 素敵な恋人たちに、嫉妬なんかしてませんからね?
 私にだって素敵な恋人がいる。なのに、別のカップルにわざわざ嫉妬する意味がないでしょう?
 
 そして距離が近づき、トド松さんが私たちを視界に入れる。

「……ゲッ!」

 待て。おそ松さんはともかく、なぜ私に対しても拒否反応を示す、トド松さん。
 なので、私は全開の笑顔で、
「トド松お兄ちゃーん!!」
「松奈?」

 おそ松さんの戸惑いをよそに、スキップでトド松さんに近づく。

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