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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 すると彼女さんも私に気づき、

「ご家族? とても可愛い妹さんね」

 社交辞令を述べる。トド松さんも、慌ててスマイルになり、
「そ、そうなんだ。いつまでも兄離れしない困った妹でさ~」
 
 私は一帯に聞こえる大声で、

「お兄ちゃん、この前の彼女はどうしたの? いつも違う女の人を連れているよね!」

 …………

 …………

 怒り狂った彼女さんが去り、後には敗北者だけが残される。
「まあまあトド松。女なんて、いくらでもいるんだ。そう落ち込むなよ」
 上機嫌のおそ松さんが、打ちのめされた末弟を慰めている。

「そうですよ、トド松お兄さん。次の恋を目指して頑張りましょう! ファイト!!」
「…………松奈」

 ゆらりと顔を上げたトド松さん。
 攻撃が始まりそうだったので、超スピードで走って避難しました。
 あとのフォローはおそ松さんにお任せしよう、そうしよう。

 で、遊園地に誘ってくれなさそうな一松さんはどこだろう。

その3:『猫』

 そして、町の中を探して探して、ついに苦労が報われるときが来た。

「やっと見つけたー!」
 
 ひと気のない薄暗い路地裏に、一松さんはいた。
 紫のパーカー、ジャージ、ボサボサ頭、くたびれたサンダル姿。そんな格好で、こちらに背を向けしゃがみこんでいる姿は間違いなく不審者……じゃない一松さんだ!!

 そして猫を撫でている。猫に囲まれている。すごくなつかれている。

 あんたドラ○もんかと言いたくなる猫ハーレム具合だ。
 一松さんは猫の方を向いたまま、動かない。
 
 そんな恋人を見てホッとする。
 遊園地とか映画とかどうでもいい。
 やっぱり一松さんがいてくれるだけで嬉しい。
 嬉しくなってつい後ろから抱きつき、甘え声で、

「もう、一松さん! 探しちゃったじゃないですか~」
 と言うと。

「にゃー」

「は?」
 
 ん? 尻尾? 猫耳? 一松さんって、コスプレ癖とかあったっけ?

「あの、一松さん……?」

 そしてゆっくり私を振り向いたその顔は。

 にゃー。

「――――っ!!」


 その後の記憶がない。

 
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