第2章 二ヶ月目の戦い
すると彼女さんも私に気づき、
「ご家族? とても可愛い妹さんね」
社交辞令を述べる。トド松さんも、慌ててスマイルになり、
「そ、そうなんだ。いつまでも兄離れしない困った妹でさ~」
私は一帯に聞こえる大声で、
「お兄ちゃん、この前の彼女はどうしたの? いつも違う女の人を連れているよね!」
…………
…………
怒り狂った彼女さんが去り、後には敗北者だけが残される。
「まあまあトド松。女なんて、いくらでもいるんだ。そう落ち込むなよ」
上機嫌のおそ松さんが、打ちのめされた末弟を慰めている。
「そうですよ、トド松お兄さん。次の恋を目指して頑張りましょう! ファイト!!」
「…………松奈」
ゆらりと顔を上げたトド松さん。
攻撃が始まりそうだったので、超スピードで走って避難しました。
あとのフォローはおそ松さんにお任せしよう、そうしよう。
で、遊園地に誘ってくれなさそうな一松さんはどこだろう。
その3:『猫』
そして、町の中を探して探して、ついに苦労が報われるときが来た。
「やっと見つけたー!」
ひと気のない薄暗い路地裏に、一松さんはいた。
紫のパーカー、ジャージ、ボサボサ頭、くたびれたサンダル姿。そんな格好で、こちらに背を向けしゃがみこんでいる姿は間違いなく不審者……じゃない一松さんだ!!
そして猫を撫でている。猫に囲まれている。すごくなつかれている。
あんたドラ○もんかと言いたくなる猫ハーレム具合だ。
一松さんは猫の方を向いたまま、動かない。
そんな恋人を見てホッとする。
遊園地とか映画とかどうでもいい。
やっぱり一松さんがいてくれるだけで嬉しい。
嬉しくなってつい後ろから抱きつき、甘え声で、
「もう、一松さん! 探しちゃったじゃないですか~」
と言うと。
「にゃー」
「は?」
ん? 尻尾? 猫耳? 一松さんって、コスプレ癖とかあったっけ?
「あの、一松さん……?」
そしてゆっくり私を振り向いたその顔は。
にゃー。
「――――っ!!」
その後の記憶がない。