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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



「俺だって、理由なんか分からない、けど……気がついたら、好き、に、なってた」

 ボソボソボソ。こんな空間でもなければ聞き取れない。

「松奈……。ごめん」

 いやそこ、『好き』とか『愛してる』では?
 今度は一松さんの方から少し身を起こし、私にキスしてきた。
 さっきよりもっと長く。やっと顔をはなし、私は笑う。

「でも皆には、秘密にしておきましょうよ」
「俺もその方がいいと思う。あいつら、誰かが女を作るとうるさいし」
「ですね」
 と私たちが笑いあったところで。

 ドヤドヤと和室に人が入ってくる音がした。

「松奈ー!! ごはん出来てる?」
「あれ、また押し入れにつっかい棒してる。松奈、いるの?」
「あー、忘れてたー!!」
「十四松兄さん、こういう悪ふざけ止めなよ」
「すぐに解放してやるからな、我が妹よ!」

「え? ちょっと! ちょっと待って!!」

 つっかい棒が外される音。そしてガラッと押し入れの戸が開けられ。

『……え?』

 五人の六つ子が見たのは、私に押し倒されている一松さんであった。

 …………

 …………

「松奈が抵抗できない一松を押し倒して無理やり? 何てひどい!!
 いやうらやましくなんかないよ? お兄ちゃん、全然っ、うらやましくなんてないんだからね!!」

「俺と!! 俺と間違えたんだろう!? そう言ってくれ、妹よ! カラ松シスターよ!!」

「まあ据え膳食わぬは男の恥って言うし、一松がいいならいいんじゃない?」

「二人が仲直りして良かったー!!」

「皆同じ顔だから誰だっていいじゃない! 僕の方がずっといいって!!」

 こら、男ども!! 集まって事実無根のヒソヒソ話をすんな!!

 ちなみに一松さんは、私を弁護するどころか完全に置物化。
 もはや私の部屋のすみでぴくりとも動かない。

 おそ松さんが、長兄の責任感からか咳払いし、

「とりあえず家の中でイチャつくのは禁止ね。キスとかも含めて!」

「あ、当たり前です!! 何もしませんよ!」

「兄妹の禁断の恋愛だし、母さん達には内緒にしよう。俺たちも隠すのに協力するから」

 そういえば妹設定で松野家に上がり込んだんだっけ。
 未だ律儀(りちぎ)に合わせてくれることには感謝しかないが。

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