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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



 今は一松さんが部屋に来ない。
 だからといって、私がぼっちで過ごしてるわけでもない。

 六つ子達はトランプやボードゲームをするようなとき、必ず私を誘ってくれる。
 ただそんなときでも、一松さん個人が私に話しかけてくることはない。

「一松兄さんと話してみれば?」
 思い切り核心を突かれた。

「え……ええと、それは……別に……」
 口ごもる。
 
 一松さんの反応が怖い。
 そりゃ一晩を一緒に過ごしたけど、告白らしい告白は無いままだった。
 結局私のことを思っているんだろう。
 何て言われるか、どう思われているか。現実を突きつけられるのが怖い。

 勢いに流されただけ。実は何とも思っていない。

 私はつまらない人間だ。容姿も平凡。スペックに至っては平凡以下。
 恋人面してつきまとわれても困る、気味悪い、重いからさっさと出て行ってほしいと思われてたら……。

「別にケンカしたわけじゃないから、大丈夫ですよ」
「そう?」
 十四松さんは、相変わらずやや焦点の合ってない目で首をかしげたのであった。

 …………

 …………

 狭い六畳間に怒声が響く。
「十四松!! どういうつもりだっ!!」
「十四松お兄さん!! 開けて下さいっ!!」
 ドンドンとフスマを叩くけど、押し入れの戸は開かない。
 
 どういう状況か。
 帰ったとき、家にいるのは一松さんだけだった。
 一松さんは私の顔を見るなり、自分の部屋に行こうとした。
 が、そんな彼を十四松さんが捕まえた。
『おい、十四松!!』
 さすが素振り一万回。成人男性を余裕で小脇に抱えるとか。
 十四松さんは私の部屋まで一松さんを抱えていき、押し入れを開けるなり、中に放り込んだ。

 そして何が何だか分からずついてきた私も、一緒に放り込んだ。
 挙げ句に外からつっかい棒をして、開けられないようにしたのだ。

「十四松っ!!」
「十四松お兄さんっ!!」

 一松さんが何とか押し入れを外そうとするが、上手くいかない。
 ちなみに前回は戸をぶち破り、お母様にお小遣い減額の制裁を食らったそうな。

「僕、二人がちゃんと話し合うといいと思うんだっ!!」

 外からは得意そうな声。

「いやだからって……」
「十四松、いい加減にしろっ!!」
「後で出してあげるからー!」

 十四松さんの足音が遠ざかる。
 そして静かになった。

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