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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



 窓の外から夜明けの光が差し込む。 

「松奈……」

 すがるように名を呼ばれ、私はキスをして応えた。
 一松さんは少し微笑み、私の頭を撫でてくれた。
 その顔を見たら、安心してしまって――。

「松奈?」

 名前を呼ばれたけれど、私は深い眠りに落ちてしまった。
 
 …………

 それから何度か目が覚めたけど、いつも私は一松さんの腕枕の中にいて。

 結局、チェックアウトギリギリまで寝てしまったのだった。

 …………

 そして昼頃に、松野家のある町に着いた。

「…………」

「……あの、一松さん」

「…………」

「…………」

 松野家に続く道をゆっくりと歩いて行く。
 だが一松さんとの会話が……会話がねえっ!!
 何かあるでしょ? こう、何か!!
 
 だが一松さんは再びダウナーに入ってしまった。
 昨晩の比では無い、この世の終わりかという暗い顔で、何を話しかけても返事をしない。

 何かまずかったかなあ。

『責任は取るからっ!』なんて言葉は期待してない。

 けど仮にもあんなことがあった翌朝なんだから。
 こう、甘い雰囲気になって手をつないだり、『好きだよ♪』とささやきかけてきたり。

 ……絶対に言わないな、うん。
  
 せっかく恋人同士になったのに――。

 恋人……ですよね?

 隣をじっと見る。暗い顔を見上げるにつけ、不安がじわじわと強くなっていく。
 青服で猫背。いつに増してもボサボサ髪。目の下にすごいクマ。

 無職。ぼっち。どうにか脱○T。

 あ、一松さんが私を見た。
 私の視線に気づいたらしい。だが高速で視線を外される。

 つきあって……るのか、これ?

 結局、松野家に戻るまで、一松さんは一言も口をきかなかった。
 その後、私たちはお母様から盛大に雷を落とされたが、それはまた別の話である。
 

 また、先に帰宅していた五人の悪魔からは、

「あ、あのさあ、松奈。昨日はごめん! 本当にごめん!!
 何か俺たち、ふざけすぎちゃって……」

 記憶は多少残っていたらしい。

 言い方にバリエーションはあれど、だいたい上記のようなことを言われ、五人から謝られた。

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