第1章 最初の一ヶ月
ホテルなんて初めて入ったし、せっかくだし部屋を見てみよう。
やっぱりベッド広いなー。余裕で大の字になれるし。
枕元のこれ、何だろう。うわ、これが噂の×××××かー。
アロマとかコスメとか色々あるんだなー。
あ、ワードローブを開けたら本物のバスローブだ。
せっかくだから着れば良かったかな。
一松さんを横目に、部屋をうろうろし、一人驚いたり赤くなったり。
そこで冷蔵庫を見つけた。何か変な構造だな。
色々と入ってるけど。あれ、このボタンは何だろう。
「げっ!」
ヤバ。押したら何か出てきちゃった。取ってみたらジュースではなかった。
缶チューハイ? お酒? どう見ても有料です。自動加算です。
うわああああ! か、勝手にいじるんじゃなかったあ!!
一人あたふたし、でも缶をじっと見る。
で、でもお酒かあ。バーのやつは強そうなやつばっかだったけど、これはアルコール度数も低いみたいだし、これなら飲めるかも……。
私はプシュッとプルタブを起こす。匂いをちょっと嗅ぎ、飲もうとして。
「こら」
上から缶を取られた。
「あ」
「何やってんの。未成年だろ」
一松さんにお酒を取られたのだ。いつ動いたんだ。
しかしこういうホテルに入ってる時点で、未成年うんぬんという指摘もどうかと。
「あ、あはははは。いや、そのお……」
笑ってごまかそうとすると、缶の底でコツンと頭を叩かれた。冷やっこい。
一松さんはそのままそこに座り、缶チューハイをあおる。
一口飲んで『甘っ』と嫌そうな顔をしたが、飲み続けた。
「…………」
私もその横に座り、そっともたれる。
だからビクッとしないで下さいよ。私が加害者みたいじゃないっすか。
「重い」
可愛く、もたれてるだけなんだけどなー。
一松さんは落ち着かないようだ。頬がやけに上気している。
またアルコールが入ったから?
背中に耳を押しつけると、聞こえてくる鼓動の音が半端ない。
やはり飲み過ぎだろうかと、うなっていると。
「……悪かったよ」
「え?」
「あいつらがしたこと。それと、俺がさっき言ったこと……」
ああ、酒の勢いで言っちゃったやつね。
「何より、おまえは嫌がってたのに、早く助けてやらなくて……嫌な思い、させた」
言いながら、一松さんはどんどん落ち込み出した。