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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月




 ホテルなんて初めて入ったし、せっかくだし部屋を見てみよう。
 やっぱりベッド広いなー。余裕で大の字になれるし。
 枕元のこれ、何だろう。うわ、これが噂の×××××かー。
 アロマとかコスメとか色々あるんだなー。
 あ、ワードローブを開けたら本物のバスローブだ。
 せっかくだから着れば良かったかな。

 一松さんを横目に、部屋をうろうろし、一人驚いたり赤くなったり。
 そこで冷蔵庫を見つけた。何か変な構造だな。
 色々と入ってるけど。あれ、このボタンは何だろう。
「げっ!」
 ヤバ。押したら何か出てきちゃった。取ってみたらジュースではなかった。
 缶チューハイ? お酒? どう見ても有料です。自動加算です。
 うわああああ! か、勝手にいじるんじゃなかったあ!!
 一人あたふたし、でも缶をじっと見る。
 で、でもお酒かあ。バーのやつは強そうなやつばっかだったけど、これはアルコール度数も低いみたいだし、これなら飲めるかも……。
 私はプシュッとプルタブを起こす。匂いをちょっと嗅ぎ、飲もうとして。
「こら」
 上から缶を取られた。
「あ」
「何やってんの。未成年だろ」
 一松さんにお酒を取られたのだ。いつ動いたんだ。
 しかしこういうホテルに入ってる時点で、未成年うんぬんという指摘もどうかと。

「あ、あはははは。いや、そのお……」
 笑ってごまかそうとすると、缶の底でコツンと頭を叩かれた。冷やっこい。
 一松さんはそのままそこに座り、缶チューハイをあおる。
 一口飲んで『甘っ』と嫌そうな顔をしたが、飲み続けた。
「…………」
 私もその横に座り、そっともたれる。
 だからビクッとしないで下さいよ。私が加害者みたいじゃないっすか。

「重い」

 可愛く、もたれてるだけなんだけどなー。
 
 一松さんは落ち着かないようだ。頬がやけに上気している。
 またアルコールが入ったから? 
 背中に耳を押しつけると、聞こえてくる鼓動の音が半端ない。
 やはり飲み過ぎだろうかと、うなっていると。

「……悪かったよ」

「え?」
「あいつらがしたこと。それと、俺がさっき言ったこと……」

 ああ、酒の勢いで言っちゃったやつね。

「何より、おまえは嫌がってたのに、早く助けてやらなくて……嫌な思い、させた」

 言いながら、一松さんはどんどん落ち込み出した。

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