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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



「なら、俺とも遊んでくれるよな? 金を払えば」

 と、私の襟元から中にねじこむ。指が私の鎖骨に触れてビクッとなる。

「あの、本当に……ごめなさ……」
「行くぞ」

 強引に手を引っ張られた。
 今さらながら、彼も酔っているのだと思い出す。
 そして一松さんは猛烈に激怒している。
 誰にだろう。私にだけでは無い。自分自身に……?

 そして私は、深夜の街を引きずられて行った。

 …………

 …………

 とまあ、あんな連れ去られ方をして。

 さて私はどうなったでしょう。
 つつがなくいただかれ、ハッピー(バッド?)エンドのロゴが出たでしょうか?

 そうなると思いました? そういうのが良かったって?

 は……はははは……は……は……。



 ど う し て あ あ な っ た 。



 …………

 …………

「うーん」

 アロマの香りに湯気。そして炭酸のお風呂。
 初めて見る、恋人向けホテルのお風呂、いやバスルームは、やたらキラキラしててくつろぎにくかった。本来は二人で入るだろうバスルームに一人。
 落ち着かない。バブルに身体をまかせ、私はため息をついた。

 くつろげないままシャワーから出、髪を乾かす。
 そして私は自分の服を着て、部屋のすみの物体に声をかけた。

「あ、あのお、一松さん。シャワーが終わりましたんでどうぞ」
「…………」

 ちょっとぼさぼさの髪、スーツっぽい青服。
 彼は膝を抱えている。広い部屋のすみっこにいる。

「あ、あの。ねえ?」
「…………」

 何度も呼びかけ、やっとこちらを見上げてきた視線は、路地裏の子猫のよう。
 今この場で、消えられるなら消えたいなあ、みたいな。

 …………。

 何でさっきのシーンから、ここまで豹変したかって?

 何が起こったか。何も起こっていない。

 むしろ一松さんが通常モードに戻ったというべきだろう。

 夜の街を一緒に歩いているうちに、一松さんのテンションが急下降していったのだ。

 それこそ、途中で立ち止まり『タクシーを拾って帰る?』と言い出し、私をポカンとさせる程度に。

 ええええー? と、私は驚きましたよ。

 さっきの壁ド○は何だったんだ!!
 金を払って私に遊んでほしいんじゃなかったの!?
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