第1章 最初の一ヶ月
故意なのか酒で暴走したのか不明だけど、自制という言葉を失った酔っ払い五人に絡まれています。
しかし段々と内心の焦りが強くなる。
こっそりと席を立とうにも、五人が即座に逃亡をガードするので、離れられない。
トイレに行くフリをしようとしても、護衛だナンパ防止だと理由をつけてついてくる。
そうこうしているうちに、ずいぶんと遅くなった。
このままだととんでもないことになるのでは?
だが、一松さんは――て、本当に席を立ったっ!
嘘! 本当に帰っちゃった!!
だが酔っている兄弟は気づかない。全員、上機嫌で、
「なーんか遅くなっちゃったね、松奈ちゃん~」
「あ、そういえばさ、この近くにホテルあるんだよ」
「もう終電だし、皆で泊まってっちゃおうか~」
「フ。夜景を見ながら俺の腕枕で寝るといい」
私のソフトドリンクを持つ手がガタガタガタと震える。
彼らはいい人たちだ。
素面(しらふ)なら絶対、私は恋愛対象じゃないし、彼らも変なことは考えない。
だけど、今は……どうなんだろう。
そして私の肩に手を回し、もはや見分けのつかなくなった五人の一人がささやく。
「……ねえ。裏オプションって、いくら?」
ひいいいいいっ!!
五人の目も光った気がする。
まずいまずいまずい。
酒の魔力と、脱D○の誘惑の前に、全ての自粛材料を放棄してるようだ。
逃げようとするが完璧な連携によって左右を完全に固められている。
背後から一人が私の両肩をつかみ、
「じゃ。そろそろ出て、ホテルに行こうか……」
「家族だから、同じ部屋で問題ないよね」
「大丈夫、ちゃんと全員分……裏オプション代を払うから」
「心配しないでよ、初めてなんでしょ? 優しくするからさ」
いや、初めてなのはあなた方もなのに、優しくも何もないだろう!
絶対に悲惨なことになる!! もう私が、本気で泣くかというとき。
「おい、クズども。最後にこれを飲んでいこうぜ」
一松さんだ。私たちの前に、ドンッと洋酒の大瓶を置いた。
「この店で一番美味いやつだってよ。勧められて買ってきた」
『おお~』という顔になる五人。女もいいけどお酒も好きな××集団である。
「じゃ、ラストをこれでしめますか!」
『さんせーい!!』という声がそろった。