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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



「はああ?」
 声を出したのは私ではなく、またも一松さん。
「おい、いい加減にしろよ」

 彼は私の前に立ち、トド松さんがノリノリで出してきた千円を突っ返そうとしたが、

「おいおい、一松~。何? やけにこの子のことを庇うじゃないか」
 おそ松さんが邪悪な笑みをする。
「あれ~、一松、好きなの? もしかして~」
 小学生かっ!!

「べ、別に……!」
 瞬時に一松さんが変わる。こっちも小学生メンタルか。
「こんな居候、別に何とも思ってねえよ……。
 おい、うっとうしいから、いちいち背中に隠れてんじゃねえよ!!」

 豹変。

 だが、他ならぬ一松さんに睨まれると何も言えない。
 でも私がおずおずと背中から出ようとすると、

「嫌ならちゃんと断れ。あいつらは悪ノリがひどい」

 ボソッと一松さんが早口で言うのが聞こえた。

 けど五人は楽しそうだった。
「はい、改めて千円ね。じゃあ行こうよ! その千円で何か楽しいことをしよう!」
「まずどこかで食べて、カラオケに行って……」
「よーし、行くぞー!!」

 悪ノリという感じはしない。行き先のチョイスも危ない感じじゃ無い。
 皆の顔は、全員で遊びに行く~という感じだ。
 お金を払うのも冗談の延長みたいだ。

 一松さんをチラッと見る。
 気のせいか、何かを願っている顔に見えた。

 私に、この五人の遊びの誘いをキッパリ断ってほしいと。
 彼らを振り払って、自分を選んで欲しいと。

 さっきと違い、ものすごく不安そうで……。

「はい、行きましょう!」

 一松さんに背を向け、五人に笑顔でそう言った。
 さっき冷たくされた腹いせだろうか。
 自分の中の『何か』に戸惑っていたせいだろうか。

「やったあ!」
「行こう行こう!」
「フ。俺の誘いに答えたくて仕方がないようだな、カラ松ガー――」
「あ、俺、お酒飲める店も行きたい!」
「松奈ちゃんがいるし、お金もあるから、今日はちょっといいところに行こうか!」
『おー!!』
 と私は五人に手を引かれ、笑顔でついて行った。

 その後、一松さんは後についてきたものの、私たちの輪に一切加わることはなかった。
 終始離れてついてきて、どの店に入ってもつまらなさそうに、すみっこにいた。

 ……で、最後に案内されたバーで、○T集団が暴走したのである。


 はい、回想終了。

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