第1章 最初の一ヶ月
『くっそ~、イヤミの奴を取り逃がしたよ~!』
と五人の追跡班が戻ってきたのだ。
再集結した六人は、まずイヤミ社長への罵倒を一しきりループさせた。
怪しいサービスに乗っかった側にも若干の非がある気がするが、無職の集団は、お金のことになると怒りが半端ないようだ。
思えばその時点で逃げているべきだった。
怒りの行き場を失い、矛先が私に向くのも時間の問題だったのだ。
「これというのも松奈が変な話に乗ったからだよ」
「最初の時点で怪しいと思わなきゃ」
ぐちぐちとお説教モードに入られた。
いや怪しいと思ったし、断るつもりで来たし!
一松さんの陰に隠れるようにお説教を聞き流していると、
「おい。こいつを責めても仕方ねえだろう。」
と機嫌の悪そうな一松さんの声。
(カラ松さんも同意したそうにしていたが、一松さんの前では引き気味らしい)
「まあ確かに。はあ~楽しみにしてたのに」
「松奈、これからは気をつけなよ」
ようやく一行が渋々解散しかけたとき。おそ松さんが、
「よし、じゃあ松奈にデートしてもらおう! 行こう、松奈!」
「はあ!?」
と一松さん。えーと、サービスはデートじゃなくお散歩なんだけど。
だがツッコミを入れるより先に、
「そうだね、お金はもう払ってるし、問題ないよな」
と、チョロ松さん。問題ないのか!?
だがこの時点では皆、イタズラでも企む顔だった。
損を少しでも取り戻したい、憂さ晴らししたい、みたいな。
……もしくはチェリーの執念だったのかもしれない。
この似ていないようで似ている六つ子は『女の子とデートしたい!!』という永劫不変の欲求を持ち、そのためには兄弟間の醜い裏切りや戦いも辞さないらしい。
彼らは『女の子とデート出来る!』というテンションで昨日から盛り上がりまくり、ギャンブルの勝ち金やなけなしの貯金を下ろして、ここに来たらしい。
で、そこにいたのが私。
『デートしますか? Yes/No』
という内なる問いに、あらゆる良識を無視し、六人中五人がYesに傾いたらしい。
げに恐ろしきは、D○&無職の集団。
「デート、デート! 手をつなごうよ。あ、お金を払うんだっけ? はい千円!」